「甲子園、2部制でも命が危ない」と医師警告のワケ 無理する球児を襲う「熱疲労の蓄積」の怖さとは

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WBGTI とは気温や湿度、日射など熱環境など、いくつかの指標を考慮して決められる。気温32℃、湿度42%などいくつかの基準を満たせば、WBGTIは80を超える。夏の甲子園はまさにこのような環境だ。

炎天下で連戦すれば、熱中症患者が続出してもおかしくない。近田投手の例は、おそらく氷山の一角なのだろう。

熱疲労の蓄積のメカニズムとは?

余談だが、最近の研究で、熱疲労の蓄積のメカニズムについても多くのことがわかってきた。

主要なメカニズムは炎症の連鎖反応だ。炎天下でハードトレーニングをしたあと一晩休息するぐらいでは、体内に炎症反応は残っている。翌日に同じような活動をすれば、炎症反応は一気に拡大し、重症化のリスクが高まる、というわけだ。

その際、筋肉の収縮を制御するのに重要な役割を果たす遺伝子(RYR1遺伝子)や、人体の熱制御に関わるヒートショックタンパク質を作る遺伝子などの多型(個人差)や異常が、熱疲労に関係しているようだ。

つまり、熱中症の発症のリスクには、個人差があるというわけだ。将来的には、ハイリスクの人は炎天下の屋外で行う競技を避けるように指導するなど、個別対応ができようになるだろう。ただ、それにはもう少し時間がかかりそうだ。

話を戻そう。

現在よりずっと気温が低かった1990年代に海兵隊を対象として、熱中症対策の研究が発表されているのは、彼らのトレーニングが熱中症のリスクが高いと判断されていたからだろう。

海兵隊の新兵訓練は「ブートキャンプ」として、日本でも広く知られている過酷なトレーニングだ。そのなかには、炎天下でのランニングや長距離の行進も含まれる。

軍隊との関係が密接なことで知られるハワード大学の研究者が、ブートキャンプでの熱中症対策に興味を抱いたのももっともなことだ。

ちなみに、熱中症対策の観点からは「ブートキャンプ」以外に2つの競技が注目を集めていた。アメリカン・フットボールと長距離走だ。

オクラハマ大学のランディー・アイシュナー医師は「1995年以降、毎年3人のフットボール選手が熱中症で亡くなっている」と言う。長距離走が危険なのはいうまでもないだろう。 2001年のシカゴマラソンでは、マラソンに初挑戦した若い男性が26マイル地点で熱中症で倒れ、亡くなった。

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