この社会や世界のシステムは、一国の市民が民主主義政治を通じて影響を及ばすには、巨大すぎるものとなってしまった。一方、消費の力は強い。一つ一つの買う行為が投票行動であり、私たちの住む社会の行く先を決める手綱となりうる。そのことを、消費者が理解し始めたとも解釈できる。
「身の丈消費」という点ではファストファッションはリーマンショック後の価値観に合致しているが、大量画一生産・消費=使い捨てという側面は支持され続けるか、大きく疑問だ。廉価であることが重要なのではなく、消費者が納得できる価格とストーリーのある中小ブランドが台頭してくる可能性が考えられる。例えば、「マザーハウス」。途上国の貧困克服のため、バングラデシュのジュート(麻)やレザーを用いて作った高品質なバッグを製造・販売する同社のような存在がもっと活躍するようになるかもしれない。
昨今の民主党と自民党のマニフェストではないが、世論=消費者のニーズに応えようとすれば、自ずから、その内容は似てくる。現に、ユニクロのヒートテックを模倣したPB製品が世の中を埋め尽くしている。そこに、新たなヒットの兆しは見えないだろうか。下着の楽しさ、身につける快楽は本当にどこにあるのだろうか。倫理的に、あるいは、美的に、良い製品とは何だろうか。機能的なだけが、価値だろうか。
ヒット商品を作りたければ、ヒットの「反対側」を見ることも重要だ。そして、「逆張り」をする。真逆の理念や美を訴求する。次のブームを読むには、まずは一つの方向に振り切った状態を見つけることから始めたい。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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