アフガン諜報戦争〈上・下〉 CIAの見えざる闘い ソ連侵攻から9.11前夜まで スティーブ・コール著/木村一浩、伊藤力司、坂井定雄訳 ~「世界最悪の地」を生んだ米国の無策と傲慢さ

アフガン諜報戦争〈上・下〉 CIAの見えざる闘い ソ連侵攻から9.11前夜まで スティーブ・コール著/木村一浩、伊藤力司、坂井定雄訳 ~「世界最悪の地」を生んだ米国の無策と傲慢さ

評者 中岡 望 東洋英和女学院大学教授

本書の原書は2004年に発行され、ピュリッツァー賞を受賞した本である。出版後7年が経過しているが、現在でも十分に読み応えがある。原題は『幽霊との戦争──CIA、アフガニスタン、ビンラディンの秘密の歴史、ソビエトのアフガン侵攻から2001年9月11日まで』で、原題のほうが本書の内容を的確に表現している。著者は本書を執筆したときにワシントン・ポスト紙の編集局長の職にあり、現在はシンクタンクの会長である。

原題の「幽霊(ゴースト)」とは「見えざる敵」を意味する。アフガン侵攻の際にソビエト軍兵士がアフガン兵に対して使った言葉である。ソビエト軍は、その「見えざる敵」に敗北する。そして今、ブッシュ前大統領が始めた“もう一つのアフガン戦争”で、アメリカ軍も同様の運命をたどりつつある。

本書はさまざまな読み方ができる。アメリカ外交政策の本として、あるいはソビエトのアフガン侵略、アフガンを中心とした中東情勢の書としても読める。さらに諜報世界の内実やCIA(米中央情報局)を分析した本としても読める。政府の秘密文書などを駆使し、豊富なエピソードが盛り込まれている。

9・11連続テロ事件はアメリカを完全に変えてしまった。しかし、それはある日突然起こった事件ではなかった。アメリカはソビエト軍に対抗するためにアフガンのゲリラに巨額の軍事支援をした。しかし1991年にソビエトが解体すると、支援は止まる。アメリカにとってアフガンは冷戦の一つの駒にすぎず、冷戦終結でその重要性は失われた。援助中止とともにアフガンは崩壊し、「世界最悪の地と肩を並べるまでになった」。

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