9人の男性全員が番組で出会う誰かと「恋愛をしたい」というモチベーションで参加しています。ひとつ屋根の下で恋愛し放題の状況を作り出すこともできそうですが、あおるルールを設けず、ゲーム性もほぼないこともあってか、ガツガツしていないようにも見えます。若いゲイくんたちが美味しいコーヒーを作りながら夏の思い出を作っているという印象です。編集のこだわりでアート映画のような小じゃれた雰囲気さえあります。
むしろスタジオトークのほうが前のめりです。メインMCのMEGUMIをはじめ、青山テルマ、徳井義実、ホラン千秋、そしてドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダの5人が細かな動きをひとつひとつ拾って、盛り上げます。
序盤こそ、日本初の同性愛リアリティ番組という話題性頼りで、当事者として関心を持つ人やもともとBL(ボーイズラブ)コンテンツ好きでもないと刺さりにくいんじゃないかと心配にもなりますが、それだけで終わりません。恋愛リアリティ番組が苦手な層も取り込む力があります。
見どころは純度の高い恋愛
そもそも恋愛リアリティ番組が苦手だと思うのは、現実を突きつけられた気分になることが理由の1つにありそうです。自身の体験や状況に重ね合わせて一喜一憂しすぎると、エンタメとして楽しめないのかもしれません。生々しい会話や感情がふんだんにあるのがリアリティ番組。だからこそ、ドラマ以上に沼る場合もあります。
既存の恋愛リアリティ番組は多数派の異性の恋愛を対象としたものばかりですから、余計に苦手な層を作り出したともいえそうです。でも、Netflix「ボーイフレンド」は同性だけという設定に大きな違いがあります。それゆえに伸びしろがあるのです。
徐々に恋愛リアリティ番組らしい展開も見せていきます。しかも、もっともらしいマニュアル本のような恋愛ではなく、不器用な恋愛です。恋愛初期の期待や不安が混ざり合った複雑な気持ちを淡々と映し出していることに好感が持てるはず。これこそ、この番組最大の見どころです。
なかでも大学生のダイ(22歳)とアーティストのシュン(23歳)の物語はそれを十分に満喫できます。若さも相まって、純度の高さを保証します。「キスをすれば、すべてがわかる」といった言葉まで飛び出してきます。たとえるなら、北イタリアを舞台に2人の青年のみずみずしい恋と青春を描く映画『君の名前で僕を呼んで』(2017)のようなイメージです。
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