キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー --アメコミとスーパーヒーローと日本化《宿輪純一のシネマ経済学》

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 本作の副題にファースト・アベンジャーとあるが、マーベルでは彼らのスーパーヒーローをアベンジャー(もともとの意味は“報復者”か)と呼ぶことがある。それぞれの映画の最後のシーンにも匂わせるものがあったが、実は、来年それらのスーパーヒーローズを全員集合させた、その名も『The Avengers(アベンジャーズ)』という映画が公開される。ちなみにスーパーヒーローという言葉もこの2社によって商標登録されている。

このスーパーヒーローものには特徴がある。やたら派手なコスチューム(目立ちすぎ?)を身にまとい、基本的には献身的で自己犠牲もいとわない。そして“勧善懲悪”の原則。このわかりやすさが、現在の世の中でヒットし、最近スーパーヒーローもの映画が多くなっている要因だろう。
 
 もちろん、そもそもの内容がよいというのが大原則で、またハリウッドが慢性的なシナリオ不足になっていることも背景にある。しかし、それよりも、現在の米国、および日本をはじめとした先進国の経済や社会情勢がよくないということがあるのではないか。
 
 もともと米国では映画は政策的にハッピーエンドに作られていたともいわれている。そのため、この勧善懲悪の展開は大変、ストレス解消になる。

最近、欧米で“日本化”ということがいわれている。自分では改革できず、経済・社会が行き詰まってくる。経済的には低成長とデフレの組み合わせとなる。欧米も日本のようにインフレからデフレに向かっていく兆しがある(つまり欧米の先の姿が日本なのである。すなわち、日本は欧米の一歩先を行っているのではないか)。
 
 このように世の中の状況が厳しくなっているがために、ストレス解消のスーパーヒーロー映画が受けているのではないか。これから状況が悪化すればするほど、より受けることになるのかもしれない。
 
 ちなみに、アメリカのコミックには、日本の『少年ジャンプ』などのような、いくつかの漫画作品がまとまった形態の週刊誌はない。ひとつひとつの物語でまとめて雑誌形態で売られている。しかも、色彩は伝統的に原色系が多く、絵は三角構図が多い。日本の洋書店でも売っている。
 
 本作品の題名には『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』と、アメリカが入っている。世界には反米の国もある。そのため、国によって選択させアメリカの名前は外して『ザ・ファースト・アベンジャー』のタイトルの国もあるという。

10月14日金曜日より公開。今の世相にはマッチした映画か。
 

しゅくわ・じゅんいち
博士(経済学)・映画評論家・エコノミスト・早稲田大学非常勤講師・ボランティア公開講義「宿輪ゼミ」代表。1987年慶應義塾大学経済学部卒、富士銀行入行。シカゴなど海外勤務などを経て、98年UFJ(三和)銀行に移籍。企画部、UFJホールディングス他に勤務。非常勤講師として、東京大学大学院(3年)、(中国)清華大大学院、上智大学、早稲田大学(4年)等で教鞭。財務省・経産省・外務省等研究会委員を歴任。著書は、『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)、『通貨経済学入門』・『アジア金融システムの経済学』(以上、日本経済新聞出版社)他多数。公式サイト:http://www.shukuwa.jp/、Twitter:JUNICHISHUKUWA、facebook:junichishukuwa ※本稿の内容はすべて筆者個人の見解に基づくもので、所属する組織のものではありません。

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