ギリシャはユーロ圏に残ってよかったのか 永遠の割高通貨と半永久的な締め付け

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今回の揉め方を見る限り、「次のチャンスはない」という印象は受ける。この点、第3次金融支援合意は長い目で見れば本当にポジティブな材料といえるのか疑わしい。支援で幸せになれるかどうかはギリシャの忍耐次第である。

もっとも、EU監視下とはいえ基金の運営はギリシャ当局に任され、設置場所はギリシャ国内であるということを踏まえると、valuable assetsの現金化が想定通り進むか定かではないという別の問題は残る。第2次金融支援が合意された時にも「トロイカが監視のためアテネに常駐し、融資は別勘定に入れて確実に返済管理するので問題ない」といわれていたが、結果は周知の通りになった。

「残留」と「離脱」の違い

それほどのリスクを背負ってまでギリシャがユーロ圏に残る意味はあるのだろうか。

もちろん、ユーロ圏の円滑な運営を志向する加盟国及び EU当局(主に欧州委員会や ECB)の側には、ギリシャのユーロ圏離脱という前例が「蟻の一穴」となり、今後の求心力に支障を来すという懸念があるため、離脱を防ぎたいという動機がある。平たくいえば「我々の理想のためにここに残れ」という思いである。

また、ユーロシステムとして、これまでにギリシャに供与した支援額は第1次・第2次金融支援やTARGET(ECBとユーロ参加19カ国の中央銀行の資金決済システム)債務、証券市場プログラム(SMP)等の金額を総計するだけでも 3000億ユーロ程度、ユーロ圏 GDP(国内総生産)の3%強に達する。これらがユーロ離脱によってドラクマ建てに換算された場合、そのほとんどについて返済される目途は立たないだろう。「何年掛かっても回収したい」との思いが離脱を防ぎたいという動機に繋がっても不思議ではない。

また、そうした経済的理由は脇に置いても、欧州南東部がユーロ圏を含む西側陣営にとって地政学的要衝であるという政治的理由が、ギリシャをキックアウトしたくない最大の動機であることは周知の通りである。筆者は経済的理由に照らせばギリシャは離脱した方が良いと考えるものの、そのような政治的理由が優先されるならば残留も致し方ない選択肢とは考えている。

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