「クリミア上陸作戦」で停戦交渉狙うウクライナ 秋に向け軍事攻勢へ、力の立場でロシアへ呼びかけ

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ウクライナ軍が反転攻勢を仕掛けるためには、内なる大きな障害もある。反攻を巡り、バイデン政権との溝が一向に解消できないことだ。

先述のNATOサミットの際、ゼレンスキー大統領は米欧に対しウクライナに供与した兵器によるロシアへの越境攻撃の地理的制限を撤廃し全面解禁するよう求めた。ウクライナが求めているのは、F16などでロシア領内深くにある軍基地を攻撃できる許可だ。

しかし、ロシアとの軍事的エスカレーションを懸念するバイデン政権は一向に応じる姿勢を見せていない。

ゼレンスキーに不満を示すバイデン政権

筆者は2024年6月4日付の「アメリカとウクライナの足並みがそろわない理由」で、ホワイトハウスが2024年内での反攻作戦実施に反対し、2025年に延期するよう求めてきたと書いた。

しかし、先述したようにゼレンスキー政権としては、最大の軍事的支援国であるアメリカの意向に逆らってでも、クリミア奪還を目指した反攻作戦を開始する構えだ。

これに関連して、アメリカのニューヨーク・タイムズ紙が最近、アメリカ政府当局者のリークを基に興味深い記事を載せた。

ロシアのベロウソフ国防相がアメリカのオースティン国防長官との電話会談で、ウクライナがロシア領内で「秘密作戦」を計画しているとの懸念を伝えた。この計画を知らなかったアメリカは米ロ間の緊張を高めるとして、ウクライナにこの作戦を中止させたという。

この記事は明らかに、ウクライナによる日頃の軍事上の独断専行的行動を快く思っていないバイデン政権が、ゼレンスキー政権に不満を伝えるために行った意図的なリークだろう。

今後のウクライナによる反攻作戦に対し、何らかのブレーキがかかる可能性があることを示すものだ。

吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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よしだ しげゆき / Shigeyuki Yoshida

1953年、東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1986年から1年間、サンクトペテルブルク大学に留学。1988~92年まで共同通信モスクワ支局。その後ワシントン支局を経て、1998年から2002年までモスクワ支局長。外信部長、共同通信常務理事などを経て現職。最初のモスクワ勤務でソ連崩壊に立ち会う。ワシントンでは米朝の核交渉を取材。2回目のモスクワではプーチン大統領誕生を取材。この間、「ソ連が計画経済制度を停止」「戦略核削減交渉(START)で米ソが基本合意」「ソ連が大統領制導入へ」「米が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退方針をロシアに表明」などの国際的スクープを書いた。

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