終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか 水野和夫著 ~第三の知的「冒険」で示す「成長病」は没落への道

終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか 水野和夫著 ~第三の知的「冒険」で示す「成長病」は没落への道

評者 高橋伸彰 立命館大学教授

日本国債の利回り低下を糸口にして著者の知的「冒険」は始まった。それは二十数年間にわたりマーケットの動きを見てきた著者ならではの洞察でもあった。著者は8年前の『100年デフレ』で「とてつもない大きな力が働いている」と言って、400年ぶりの超低金利の正体を「一六世紀以来の近代の危機」に求める第一の「冒険」に挑んだ。当時は日本特有の現象だと見られていた超低金利やデフレを、近代が終焉を迎えたことによるグローバルな現象の先鋭だと喝破したのだ。

稀少な生産要素が国境を越えて自由に移動するグローバル化は、伝統的な経済学によれば地球規模での市場効率化にほかならない。そこではグローバル化の事実だけが分析の対象とされ、グローバル化の本質や真実には光が当たらない。これに対し著者は4年前の『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』で、グローバル化の本質とは「資本の反革命」、すなわち超低金利に象徴される利潤率の趨勢的な低下を人件費の削減で克服しようとする「資本の利潤回復運動」だと措定した。中間層疲弊の要因を「資本の反革命」に求め、賃金の下落こそがデフレの主因だと言い切った第二の「冒険」だった。

しかし第二の「冒険」では、世界システム論の創始者ウォーラーステインが「極大利潤の実現をめざす世界的分業体制」と規定した近代資本主義による、利潤空間の創造としてグローバル化の本質をとらえられても、グローバル化ではなぜ近代の危機を克服できないのかという真実にまでは迫れない。前2作に続く本書のまえがきで、前著では真実を半分しか見ていなかった、と著者が反省する理由もここにある。

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