「繰り上げ返済は早いほどよい」に異議あり

住宅ローンを「損得」だけで考えるな

つまり「返済が終わった時点」で得が発生することになるので、繰り上げ返済を行った時点の変化は「手元のおカネが100万円減る」だけだ。期間短縮型では繰り上げ返済の翌月以降も毎月の返済額は変わらないのでこれは当然の結果なのだが、多くの人が誤解をしている。

したがって「子育て費用の負担が大変だから、繰り上げ返済で早めにローンを終わらせておこう」といった考え方は間違っている。将来、子どもの大学進学時に貯金がやけに少なくて奨学金を借りる、という状況になったとしたら、その原因は10年以上前にやり過ぎた繰り上げ返済が原因かもしれない。

繰り上げ返済が家計の資金繰りに与える悪影響はそれくらい大きく、そして長い。繰り上げ返済をすれば得をすることは間違いないが、手元の資金が減って資金繰りが悪化する。ひと言で説明すると「損得と資金繰りは両立出来ない」という企業会計や資産運用のような話になる。

「資金繰り」の視点を家計にも!

実はこの「資金繰り」という視点が、家計で使われることはほとんどない。多くのファイナンシャルプランナーは損か得か、支払い額が多いか少ないかの視点でしかアドバイスをしないが、経営者の目線になれば、損得よりも資金繰りのほうが優先すべきことだ。

企業では手元に資金を確保し、支払いがストップしないことが最優先される。なぜなら支払いが止まる、つまり資金繰りがショートすることは会社が潰れることとほぼ同じことを意味するからである。

これは家計も同じだ。支払いが止まった時点で家計は破たんする。実際には住宅ローンの支払いが苦しくなれば早期に金融機関に相談をすれば対応してくれると思うが(これはケースバイケース)、そのような状況になれば「あんなに無理して繰り上げ返済をしなければ手元にあとウン百万円も貯金があって問題なく返済が続けられたのに……」と後悔するだろう。

筆者は繰り上げ返済や住宅購入を検討している方に対しては、つねに「損得よりもリスクを重視して下さい」とアドバイスをしている。すでに書いたようにリスクや資金繰りの視点を入れると購入や返済のプランは大きく変わる場合が多いからだ。

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