「繰り上げ返済は早いほどよい」に異議あり 住宅ローンを「損得」だけで考えるな

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ただ、これらはあくまで「損得」だけを考えた場合の話である。筆者がアドバイスするなら、繰り上げ返済はもっと先送りしてしまって構わない、ということになる。特に住宅ローンを借りてからまもない人が焦って繰り上げ返済すると、得をする以上に支払いが不能になるリスクが高まりかねないからだ。

多くの人が家を買うタイミングは、結婚して子どもが生まれる時期と重なる。SUUMOとウィメンズパークの共同調査によると、妻の妊娠から子どもが小学校に進学するまでの間に家を買う人は6割を超える(「住まい」購入のお金事情調査 2012年)。

これらのタイミングは妻の産休、育休、時短勤務と重なる。場合によって出産を機に仕事を辞めてしまうケースもあるだろう。つまり、多くの家庭にとって家を買うタイミングは収入が減って支出が増える時期と重なる。家を買うために多額の頭金も支払って貯金も減っているだろう。

出産直後などは、収支が大きくぶれる可能性がある

そんな手元資金の少ない状況で繰り上げ返済を急ぐと、いざというときの出費、または子どもの教育費など本来優先したほうがいい支出や貯蓄に対応できなくなるかもしれない。繰り上げ返済に汲々して小遣いが減って生活の質が下がってしまったら、せっかく楽しい生活を送るために家を買ったはずが、本末転倒な状態になりかねない。

『住宅ローンのしあわせな借り方、返し方』(中嶋よしふみ著、日経DUALの本)。FPの著者が300件の相談からわかった住宅ローンの“非常識”を徹底分析。上の画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

先ほどと同じく3500万円を借り入れたケース(金利1.61%、35年)で、100万円の繰り上げ返済の時期をたとえば購入から1年後ではなく、5年後に先送りしてみよう。すると、利息軽減効果は60万3396万円となる。その差は約10万円となり、繰り上げ返済のタイミングを4年先に延ばしも、利息軽減効果が極端に落ちるわけではない。

出産直後のようなライフステージの変わり目は、収支が大きくブレる。保育園に子供を預けられずに妻が仕事に復帰できなかったり、夫の会社の業績が急に悪化して一時的に収入が落ち込んだり、ということもありえる。そういったリスクも考慮すれば、焦って繰り上げ返済するよりも、手元におカネを残しておくほうが安全といえるだろう。

次ページ実は貯金を優先したほうがいい?
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事