汗と涙の甲子園が、子どもの可能性を潰す 甲子園と陸上インターハイに「魔の共通点」

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野球なら「ピッチャーは1試合100球まで。連投の場合、2試合目は50球まで」などの投球制限を設けてもいい。それでは困る、と文句を言う監督が出てきそうだが、エースピッチャーひとりに頼らないチームをつくればいいだけのこと。「大人の都合」を入れてはいけない。選手たちも目の前に“果実”がぶら下がっていれば、無理をしてでも欲しくなってしまう。子供の将来に重きを置いて、大人たちが“正しい道”をナビゲートすべきだろう。

小学生の頃に「夢は甲子園で優勝すること!」と思っていても、いざ甲子園で優勝を狙えるチームの中心選手になると、甲子園での優勝は“夢”ではなく、現実的な“目標”に変わってくる。同時に、別の夢が頭をもたげてくる。誰にも負けない自信があれば、ダルビッシュ有や田中将大のようにメジャーで活躍したいという夢を描くのは自然なことだろう。メジャーを本気で目指すピッチャーならば、「甲子園ごときで潰れるわけにはいかない」のだ。

スポーツ人生が長く豊かであるために

メディアが美談にしてしまうこともあり、甲子園の連投、連投が感動を生んできた。しかし、甲子園でいくらヒーローになったとしても基本、“おカネ”にはならない(人気者になればドラフトの指名順位が上がり、契約金が高くなるくらいの恩恵はあるが……)。これはおカネのために野球をやるべきだ、という話ではない。スポーツを真剣にやるならば、スポーツで長い人生を豊かにするすべを考えてもらいたいのだ。

今後も競技を続ける予定の高校生たちは、ケガのリスクもある中で、そのときしか通用しないスキルを磨く必要はまったくない。ケガをする可能性が高くても甲子園の優勝を目指すのか。それとも、絶対にケガをさせない範囲で、甲子園の優勝を目指すのか。確かなことは、体が壊れたら競技人生は終わりということだ。監督がその後の面倒を見てくれるわけではない。

陸上のインターハイでも「総合優勝」というものがあり、個人的には廃止にすべきだと思っている。入賞種目(1位が8点で、以下1点ずつ下がる)の総合得点で争われるが、総合優勝を狙うためにエースをフル回転させることが少なくないからだ。高校までなのか、それともプロになるのか。どこまで野球や陸上をやるのか、指導者たちは子どもたちに確認すべきだろう。

先ほども言ったが「スポーツは結果がすべて」。それは勝利至上主義というものではなく、スポーツをした結果が、人生の中でプラスにならないといけないという意味だ。甲子園やインターハイが、ただの“思い出”に終わるのは本当にもったいない。スポーツに熱中する高校生にとって、2015年の夏が意義のあるものになることを祈りたい。

酒井 政人 スポーツライター

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さかい まさと / Masato Sakai

東農大1年時に箱根駅伝10区出場。現在はスポーツライターとして陸上競技・ランニングを中心に執筆中。有限責任事業組合ゴールデンシューズの代表、ランニングクラブ〈Love Run Girls〉のGMも務めている。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』 (oneテーマ21) がある。

 

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