暗い部屋に入ると一気にモノとゴミの量が増える。大量のモノがギチギチに詰め込まれていて足の踏み場もないが、わずかに残った床面には空き缶、ペットボトル、調味料、使ったままの食器などの生活ゴミが転がっている。生ゴミも交じったままだ。
部屋の真ん中には二段ベッドがあり、兄は下段を主な生活スペースにしていたようだ。上段にはダンボールや衣装ケースが天井まで積み上がっていて、太陽の光を遮断している。黒カビで覆われたキッチンには料理をしていた形跡があった。使ったままの茶碗と鍋には白く濁った水がたまっている。
一人で暮らす兄は透析に通っていた
妹から片付けの依頼を受け、イーブイのスタッフ5人が現場に入った。立ち会った妹が兄について話す。
「ここに住んでいたのは一番上の兄になります。7~8年くらいは住んでいたと思います。ちょっと病気がちで透析をしたりしていたので、ご覧の通り、身の回りのことって自分の周りしかできていないと思うんですけど」
唯一の生活スペースだった二段ベッドの下段にも細々としたモノが散乱している。しかし、ベッドの周りを見てみるとマメな一面も垣間見える。いろんな場所に生活に必要なモノがぶら下がっていて、座ったままでもすぐに手で取れるようになっているのだ。病気で思うように動けなかった様子が浮かんでくる。
収納棚に目をやると、あらゆるモノに説明書きをしたシールが貼られていることに気付く。「冬物ジャケット」と書かれたシールが貼られた衣装ケースは中身が季節ごとに分けられている。調味料には「しお」「さとう」「かたくり」と書かれ、タッパーにはそのサイズまで記入してある。電気のスイッチにはそれぞれ押すとどこの電気が付くのか記されていた。
「過去に8年ほど私の家に住んでいたこともありましたが、同じような状態でした。そのときは体も悪くなかったので自分で片付けていたんですが、やっぱりモノが多くて私も大変な思いをしていました。ベッドもすごかったでしょう。それがいつも一番困るんですけど好きみたいですね。穴開けたりしたらダメって言うんですけど」(妹)
妹の言う通り、ベッドの周りはさながらコックピットのようだ。モノの配置に対する強いこだわりがなければ、そもそもここまで大量のモノをパズルのようにこの狭い部屋に詰め込むこともできなかっただろう。
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