ヴィレヴァン300店巡って見えた「人材育成の失敗」 POPを書けない、サブカルに疎い店員増加の背景
そもそも、ヴィレヴァンらしさを作っていたのは、創業者の菊地敬一さん。彼が作る店の雰囲気を見て、それを周りの人が真似ることで、自然と、あの『らしさ』が継承されていきました」(ヴィレ全さん)
POPを書けない店員が増加した理由
この「らしさ」が最も現れているのが、ヴィレヴァン特有のあの「黄色いPOP」だと言う。
「ヴィレヴァンにとって、POPはある種の営業ツールです。例えば登山のコーナーを作るとして、まず、登山のガイドブックを置いて、その周りに登山に関するアパレルや道具を置く。それによって、利益率が低くても本が営業ツールになって、周りの利益率の高い商品で採算を取るわけです。
しかし今、このPOPを魅力的に書けない従業員が増えているそうなんです。その結果、『ただ単に流行のものを並べた』だけになってしまっている店舗も存在しています」(ヴィレ全さん)
なぜ、POPを魅力的に書けない店員が増えてしまったのか。ヴィレ全さんは、従業員教育の観点から指摘する。
「ある世代までは、『菊地さんだったらこういうふうに書きそうだよね』というノリが理解されて、POPも自然と継承されていったそうなのですが、働く人たちに聞いていると、この流れが途絶えてしまったそうです。
理由は『教育の失敗』です。どうも、1986年の創業から2000年代初頭ぐらいまでに入った第1世代の人たちが、『教えること』をまったくしてこなかったらしいんです。昭和に生まれ育った世代なので、それが自然だったのかもしれませんが……。
その後、時代の空気感をある程度知る第2世代を経て、第3世代(今のZ世代)がメインのアルバイトになった現在では、『菊地さんのノリ』がわからなくなり、『ヴィレヴァンらしさ』という抽象的な概念が途絶えてしまったんです。だから、今の若い働き手たちを見ていると、POPを書ける人が減ってきているんです」(ヴィレ全さん)
営業ツールであり、空間の独創性を生んでいたヴィレヴァンのPOP。実際、面白いPOPを見てノリで購入してしまい、帰宅してから「なんでこれを買ったんだろう?」と青ざめた経験は、ヴィレヴァン好きなら一度はあるはずだ。それが今は、起きにくくなっているのだとすれば、右肩下がりの売上高にも納得がいく。
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