また林さんは、自分が生んだ仕事がまだ弱々しかった頃、会社や上司を変に刺激しないように細心の注意を払っていたという。
「デイリーポータルZを立ち上げてすぐの頃は、けっこう自腹を切っていました。取材も休みを取ったりして行っていましたね。今考えれば、会社の仕事なのに何でそんなだったんだ?と思いますけど。
とにかく、領収書を出すことで上司を刺激しないようにしていたのですね。1万円ぐらいで波風立たないようにできるんだったら、自腹切ったほうがいいですよって思って(笑)」
これが会社人として「正解」と言えるかは分からない。ただ、自分が言い出しっぺになった仕事が安定期に入るまで、壊れないように大切に育ててきた林さんの姿勢には、自分が生み出したものに対する愛を感じる。
説得し続けた10年
今でこそ月間1500万PVを稼ぐデイリーポータルZだが、今日の人気サイトになるまでには足掛け10年以上の歳月を要している。そしてその間、同サイトはつねに存亡の危機にさらされ続けてきた。
「2002年の立ち上げ以来、とにかくずっと会社から文句を言われてました(笑)。『いつやめるんだ?』とか『いつ儲かるんだ?』と。まあ儲かっていなかったから、当然ですけど(笑)。
でも、『あっ、もう来年には!』みたいな適当なことを言って、ごまかしごまかし、やり続けました。本格的に廃止対象リストに入れられて、詰められたこともありましたが」
大抵の人はここでシュンとしてしまうものだが、林さんは違った。サービスが黒字転換する2012年まで、デイリーポータルZの必要性を問いただす歴代上司に対峙し続けたのだ。
「ニフティのほかのサイトへの送客が大事と言われているときには、そう言いましたし、マネタイズが大事と言われている時期には、広告媒体としての価値を押しました。今はニフティのブランド価値の向上という価値を訴えています」
”手を変え品を変え”とは、まさにこのことを言うのだろう。
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