(第16回)スマホも日本でガラパゴス化する

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この状態を打ち破ろうと、今年4月、NTTドコモがiPhoneなどでも使えるSIMカードを発売した。しかし、ソフトバンクがiPhoneのロックを解除しないと、ドコモの回線でiPhoneやiPadを使えるようにはならない。

日本にも競争はある。しかし、それは電波の質と価格の競争ではなく、利用者の囲い込み競争だ。これは一見したところ競争に見えるが、前回述べたクラウド大戦争とは本質的に異質のものである。なぜなら本来の競争は進歩をもたらすが、囲い込みは停滞とガラパゴス化しかもたらさないからだ。かくして日本ではスマートフォンにも、おサイフやワンセグ機能が盛り込まれるだろう。

2001年、ソフトバンクはADSL回線を導入してドコモの独占状態に穴をあけた。このとき、多くのユーザーは拍手を送ったことだろう。しかし、かつての革命の旗手は、今やSIMロックで地位を守ろうとしている。

ジョージ・オウエルは、『動物農場』で、動物たちが人間の支配に反抗して革命を起こしたが、結局、豚のナポレオンが独裁者になってしまう物語を書いた。これは私が高校生のときの英語の副読本だった。ハンガリー動乱の直後だったので、たいへん興味深く読んだ。そのときには、社会主義に未来がないとは想像できなかった。しかし、今は社会主義経済が消滅した理由がよくわかる。そして、競争が囲い込み競争だけになってしまう国に未来がないことも、よくわかる。


野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)


(週刊東洋経済2011年10月1日号 撮影:引地 信彦)
※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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