リストラ案で試された東電調査委員会の真価、厳格な対応はできるのか
監視の目はどこまで鋭いか。東京電力のリストラ“監視役”として、財務内容などを調査している経営・財務調査委員会(下河辺和彦委員長)。9月末には調査結果をまとめ、東電がこれに基づき、10月中にも「特別事業計画」を発表する運びだ。
「(東電の企業体質は)まだまだ緩い」「他業種に比べると、トータルの人件費は高い感がある」──。調査委はこれまで8回の会合を重ね、下河辺委員長はその都度、東電に対して厳しい見解を示してきた。東電が5月に示した5000億円の経費削減や6000億円の資産売却についても、さらなるリストラを求める可能性がある。
拙速過ぎる議論
委員会は仙谷由人・元官房長官の肝入りで開始。当初は「東電解体」の急先鋒とも目されてきた。が、実際フタを開けてみると、委員会の役割は限定的といえそうだ。
たとえば、資産売却。社員寮や保養所など本業と関係の薄い不動産の売却計画が浮上しているが、ほかの資産も合わせて総額6000億円以上の売却資産を見極められるかは微妙。人件費にしても、東電側は企業年金減額や人員削減を示唆しているが、「(下請けやグループ会社など)すべての実態を把握するのは難しい」(下河辺委員長)ため、根本的な構造にメスを入れられるか、疑問が残る。
そもそもある調査委員によると、「当初から仙谷氏には、電力の安定供給を今後何十年にもわたって続けるために東電をいかに維持していくか、という大前提があった」。つまり解体どころか、東電を可能なかぎり現状のまま残すことを前提とした議論が進んでいる、といっていい。