戦争の痛みを伝えていかなければならない 塚本晋也監督が「野火」の映画化を急いだ理由

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(c)SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

ーーリリー・フランキーさんにオファーした時に、「リリーさんならこういう映画に出てくれそう」と思ったそうですが、こういう企画に賛同してくれる仲間の存在は大きいのではないでしょうか?

 賛同してくれる仲間は本当に宝物です。本来、『野火』は、以前、ボランティアとして参加してくれて、今はプロになっているようなスタッフを総動員して作りたかった。しかし、(予算的に)そういう状況を作れなかった。そういうスタッフには「呼べなくてごめんね」と思っています。

ーーそうしたスタッフとは、いつかは一緒にやろうと。

 そうですね。映画の規模によってはそうしたいと思っています。今はいくつか企画があって、その中から自分の好きな企画で作っているんですが、だからといって、自分の企画だけやろうと考えているわけでもありません。『双生児』とか、いただいた企画で映画を作ることもありますから。ただ、代わりに今回は、まだ右も左もわからないようなかわいいお嬢さんや坊やたちが来てくれた。いきなり大変なことをやらされることになっちゃいましたが、それだけに彼らに対する愛情は強いですね。だから今後、予算がある企画だったら、『野火』のスタッフも含めてやりたいですね。

予算は少なくても、最大限頑張ったものを見せる

(撮影:尾形文繁)

ーー映画とおカネというものは切り離せないものだと思いますが、塚本監督が思うおカネってどういうものですか?

あんまりおカネのことを考えたことないですね。もちろんこの映画も大きな規模で作りたかったのですが、最終的には絶望的に縮小された規模で作らざるを得ませんでした。しかしだからといって言い訳をするのはとにかく嫌だった。それはお客さんに失礼だと思いますから。だから最大限に頑張ったものを見せなきゃいけない。たとえば、病院が爆発するシーンがありますが、ミニチュアで爆発させようというようなことは最初からまったく考えていなかった。あれは本当に大きな病院でしたが、ああいう危険なシーンは絶対にボランティアにはさせません。あそこは『ヒルコ 妖怪ハンター』(1991年)からお付き合いのあるスタッフに仕込んでもらった。そういうポイントポイントで絶対欠かせないものはきっちりとやらなくてはいけない。

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