戦争の痛みを伝えていかなければならない 塚本晋也監督が「野火」の映画化を急いだ理由

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ーー本作を映画化したいと思い始めてから二十数年。結果として今年は戦後70周年の年にあたり、いろいろな意味で戦争がクローズアップされている時期にこの作品がぶつけられることになりました。

僕が話を聞いたフィリピン・レイテ島の戦地で戦っていた兵隊さんは、今は95歳くらい。10年前にインタビューをした頃でも、すでに85歳でした。戦争体験者の方がいなくなると、戦争の痛みを知る人もいなくなる。すると、国も戦争の方向に向かってしまう。ここから先、こういう映画が作りづらくなるだろうなという気持ちもありました。

多くの若い協力者に助けられた

塚本晋也(つかもと・しんや)●1960年1月1日生まれ。東京出身。14歳で8mmカメラを手にし、1988年に映画『電柱小僧の冒険』(1987年)がPFFアワードでグランプリを獲得。劇場映画デビュー作『鉄男 TETSUO』(1989年)が、ローマ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを獲得。ベネチア国際映画祭で『六月の蛇』(2002年)コントロコレンテ部門(のちのオリゾンティ部門)で審査員特別大賞、『KOTOKO』(2011年)はオリゾンティ部門で最高賞のオリゾンティ賞を獲得している。俳優としても活動しており、『クロエ』『殺し屋1』『溺れる人』などで毎日映画コンクール男優助演賞を受賞。公開待機作に、遠藤周作原作×マーティン・スコセッシ監督『SILENCE(原題)』(2016年全米公開予定)がある。(撮影:尾形文繁)

ーー制作資金を集めるのは大変だったと聞いています。

最初の頃は規模の大きな戦争映画を作ろうと思っていたので、おカネもたくさん必要でした。やはり多くの人に観てもらいたいので、主役も著名な人でいこうと思っていました。それはこの映画が本格化した3年前の時点でも変わらなかったですね。でも、金銭的に折り合いが付かなくて。「そうは言ってられない。とにかく映画を作るしかない」と思ったのも同じ頃でした。そこからは最小規模で始めるしかなかった。しかしだんだんと広がっていって、協力者も増えていったという感じですね。

ーー塚本監督の映画は毎回、多くのボランティアの協力があって完成します。ボランティアの方とはどういう風に関わっているのでしょうか?

自分の映画に共感してきてくれた方とお話をしてみて、頑張るという気持ちがわかったら、もうその人たちは何でもできると思うんです。もちろん基本的には細かく仕事を分担するのですが、それでもみんなで一丸となって映画を作るということには変わりはないですね。服も50着くらい作りましたし、銃も20丁ぐらい作りました。ヘルメットも水筒も作りました。原型はみんな1個ずつしかなかったんですが、それを見ながらみんなで何十個にも増やしていきました。

ーーボランティアには、主にどんな方がいらっしゃるんですか?

やはり物作りが好きで、「そういうことを真剣になってやってみたい」という人が多いですね。今回は美術を専攻している人や、映画を作りたい人、特殊技術をやりたい人もいました。それから文化服装学院に通っている女子は本当に優秀でした。彼女たちの衣装にはいつも期待してしました(笑)。

(c)SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

ーー年齢的にはやっぱり大学生あたりの世代ですか?

やはりどっぷりとできるのは20代前半が多いですね。でも今回はちょっと年齢が高くて20代後半から30代の人もいました。

ーー今まで手伝ってくれた方々の中で、プロの道に進んだ方は多いんですか?

多いですね。監督では吉田恵輔君。それからみんなから「あゆちゃん」と親しまれている坂本あゆみも監督になりました。吉田光希もそうですね。たくさんの人がプロになっています。

ーー塚本監督の撮影現場が映画学校みたいな感じですね。

僕のところに来ると絶対に勉強になると思います。何もないところから、映画ってこういう風にできるんだということもわかりますからね。自信もつくと思います。

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