しかし、いつも選挙集会で見せる口角を思い切り上げた、不遜な笑みと、テレビのスターのような振る舞いは見られなかった。むしろ、慎重な面持ちで歩き、興奮する支持者とは目を合わせず、「弱さを見せた」(ニューヨーク・タイムズ)とさえ思わせた。
「神の力があった」とトランプも言及
極め付けは18日夜の受諾演説だ。暗殺未遂事件を振り返り、神妙な口調でこう言った。
「(撃たれたが)直後に私は安全だと思った。なぜなら神が私の側についていてくれたからだ」
歓声と拍手がどっと起きた。「神の力」があったと、本人が言及したことになる。そして、集会に来て銃弾の犠牲となった消防士コリー・コンペラトーレ氏が着ていた消防服を舞台に置き、それを抱きしめて、涙を誘う感動的瞬間を生んだ。トランプ氏への連帯を示して、右耳をガーゼで覆った支持者さえいる。
銃弾で暗殺された現職の大統領は、リンカーン、ケネディを含む4人に上る。アメリカは、ポリティカル・バイオレンスでリーダーを失う困難を何度も乗り越えてきた特殊な国だ。
2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件では、民主主義を象徴する議会で6人もの市民が命を落とした。2022年10月には、ナンシー・ペロシ下院議長(当時、民主党)の夫ポール氏が自宅に侵入した男性にハンマーで殴られ、頭蓋骨骨折の重傷を負っている。
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