東芝・田中前社長が就任時に語っていたこと 2013年の就任時に掲げたミッションとは?
――東芝グループの課題や問題はどこにあると考えていますか。特に業績が厳しいデジタル分野では、構造改革を行う可能性はないでしょうか。
課題は大きく3つあると思っています。ひとつ目はデジタル、特にテレビ事業の早期黒字化です。何をもって東芝グループは成長していくのか、その成長を加速させるのかが2つ目。最後は、財務基盤をどう強化するかです。
テレビ事業については現在、社内でいろいろ検討していますが、まだ何も決まっていません。早急に黒字化を目指すということで、ありとあらゆる検討を重ねています。当然ですが在庫や固定費の削減、それから高付加価値な「4Kテレビ」といった商品、大型化へのシフトがあります。東芝ならではのテレビ開発を、ありとあらゆる項目で現在検討し、近日中に発表できると思います。今下期には必ず黒字化を達成します。
成長戦略で私自身が広めたいテーマは、「創造的成長」を目指すことです。従来から東芝は、いろいろなイノベーションをやっています。世の中にない新しいものを研究開発して商品を出し、社内では「バリューイノベーション」と読んでいますが、これは従来型になります。私が新しい考え方として打ち出そうと思っているのは、「コンセプトイノベーション」です。
さまざまな分野の多くの技術がある
東芝グループは、さまざまな分野で多くの技術を持っています。社会インフラ系、デジタル系、電子デバイス系、あるいは白モノ家電系、いろんな事業領域があります。ところがその技術を融合する、すなわちそこの技術とここの技術を合体させて違う価値、新しい商品を出していくことがあまりない。ひとつの開発は、限られた用途向けとなっている。
これは東芝グループがカンパニー制を敷いていて、カンパニーごとに開発して商品を作り、販売しているためです。この体制に横串を刺し、技術を組み合わせると全然違ったものができる可能性がありますよね。そういう創造的な技術の融合やビジネスがあまりされていないのです。
「創発」という化学用語があります。一つひとつの物質が組み合わさって全然違う形になるという意味です。創発のように東芝グループが持っている技術資産や知的財産を把握しながら、どれを組み合わせると違うビジネスになるのか。ぜひ作り出したい。そういう意味で創造的成長を掲げ、新しい考え方の合わせ技で融合しながら違うモノを作っていこうと思っています。
最後は財務基盤の強化です。世の中のスピードはものすごく急激に変わっていますよね。それに対応するため、私はありとあらゆる業務、プロセス、生産性を上げたい。一般的に生産性というと製造の生産性と言われますが、これに限らずスタッフ業務、研究開発、ITなど、あらゆる業務のスピードと生産性を上げると、効率的に3倍の仕事ができると思っています。