日韓双方の「忖度」が生んだ不毛なレーダー照射問題 安倍・文両政権の存在感薄れ「棚上げ」で解決
文政権は開会式直前の歓迎レセプションなどで、なんとかアメリカと北朝鮮が接触し、対話を前に転がしていくことを期待していた。だがレセプション前に会談していた安倍、ペンス両氏は遅れて到着。金与正氏は欠席し、のっけからつまずく格好となった。
これに文氏らは、米朝対話の進展を望まぬ安倍氏が韓国側の意図を知っていながらわざと妨害したと認識し、激しく憤慨した。
しかしその後、結果として米朝対話は進み2018年6月、ついに史上初の米朝首脳会談がシンガポールで実現。さらに翌2019年2月、今度はベトナム・ハノイで2度目の首脳会談を開催することになる。
ただ、これら一連の流れに向ける日本政府の視線は冷たかった。文氏が2024年5月に出した回顧録で、安倍氏について「対話を通じて問題を解決しようとするわれわれの努力を支持する考えがまったくなかった」と指摘したように、根本的な考え方自体が大きく異なった。
日韓歴史問題も悪化
歴史問題も悪化の一途をたどった。
日本政府は早い時期から韓国側に対し、日本企業を被告とした徴用工訴訟の大法院(最高裁)の判決次第では、たいへんな外交問題に発展すると警告していた。だが危機感の薄い文政権は具体的な対応をとらず、とうとう2018年10月、日本企業に賠償を命じる判決が大法院で確定してしまう。
さらに追い打ちをかけたのは慰安婦問題だ。前任の朴槿恵政権下の2015年12月、元慰安婦らへのケアにあたる「和解・癒やし財団」に日本政府が10億円を出すことなどで、日韓両政府は政治合意した。だが文政権はこれを事実上、形骸化し2018年11月、財団の解散を正式に発表した。
下降の一途をたどる日韓関係とは対照的に、南北関係は改善が進んでいた。財団の解散発表の20日前には、南北は軍事境界線近くでの敵対行為をぴたりと全面停止した。
こうした状況下で起きたのが、日本海でのレーダー照射事件だった。
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