日韓双方の「忖度」が生んだ不毛なレーダー照射問題 安倍・文両政権の存在感薄れ「棚上げ」で解決

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

これに対し、韓国国防省は同21日の夜、「作戦活動の中でレーダーを運用したが、日本の哨戒機を追跡する目的で運用した事実はない。誤解がないように十分に説明する予定だ」と否定した。

同24日に韓国海軍は記者会見を開き、韓国の艦艇は当時、一帯で北朝鮮漁船の救助活動をしていたことや、自衛隊の哨戒機が艦艇の真上を通過する「特異な行動」をとったため、「光学カメラ」を向けたことを明らかにした。

光学カメラは火器管制レーダーのすぐ横に備えつけられ、作動させるとレーダーのアンテナも同時に動くが、カメラを使うこと自体は危険を与えないと主張。「光学カメラだけを作動させ、レーダー照射はしていない」とした。

韓国側の対応にしびれをきらした防衛省は同28日、哨戒機が撮影した当時の映像を公開する。約13分間の映像は、音声の一部が処理されているものの、当時の緊迫した生々しいやりとりが残っていた。

これに韓国政府は反発し、約4分半の独自の映像を公開した。だがここには、韓国海軍が訴える自衛隊の哨戒機が低空飛行で韓国軍の艦艇に迫ってきた場面などは含まれていなかった。

日韓間の協議はその後も続いたが、主張は平行線をたどるだけだった。

権力中枢ばかり向いたパフォーマンス

事実関係をめぐる双方の主張が大きく食い違う状況は、にわかに市民感情にも悪影響を与えた。日本では、自衛隊員の安全に関わる問題だけに看過できないとして、日本に厳しい姿勢であたる文在寅政権への評価はいっそう下がっていった。

韓国でも、北朝鮮漁船を懸命に救助している最中に自衛隊哨戒機がからかうような挑発を加えたことが問題であり、レーダー照射の有無は本質ではないといった議論が出るに至った。

だが先鋭化する対立とは裏腹に、日韓両政府内では、あまり自国の正当性ばかりを強調するのは得策でないという指摘が出始めていた。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事