「トランプ氏銃撃」日本で起きた時の最悪シナリオ 日米の「要人警護」の違いから事件を読み解く

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ここでトランプ氏の頭をねじ伏せてでも自分たちの盾の中に入れることもできただろうが、現時点で世間的には「トランプ氏よくやった!」という評価だ。

勝手な行動を許したらダメだろうという意見はあるものの、結果的に有効なアピールとなったし、政治家にとってそれは重要なことなので、どこまで許すのかは難しいところだ。

2022年7月8日に奈良県で起きた安倍元首相の悲劇も、そばに警護がついていなかったことが問題だった。これは、日本の伝統的に、応援演説の際、有権者に対して物々しい雰囲気を出したくないという配慮があったためだ。これが政治家の警護の難しいところでもある。

今回の事件の場合、1発目の銃弾がトランプ氏の右耳上部を貫通した3秒後には、そばにいたシークレットサービスがトランプ氏に覆いかぶさっている。日本と違い、半径1m以内の直近警護ができていたからだが、トランプ氏のガッツポーズまでは止めることができなかった。

日米のシークレットサービスの違い

改めて、事件の時系列はこうだ。

壇上で演説していたトランプ氏。銃声が鳴った直後、トランプ氏は右耳を押さえ、すぐにしゃがみ込んで演説台の下に身を隠した。3秒ほどで近くにいたシークレットサービスがその身体に覆いかぶさる。

トランプ前大統領
銃撃直後、しゃがみ込んだトランプ氏に覆いかぶさるシークレットサービスたち(写真:Getty Images/Anna Moneymaker)

その後30秒ほどで武装した機動隊員が壇上に上がり、周囲を警戒。さらに30秒ほど待機した後、シークレットサービスと機動隊に囲われたトランプ氏が壇上から降りて、車に乗り込んだ。

安倍元首相のときは、1発目の凶弾が外れたのに、その後すぐに身を隠したり、SPが覆いかぶさったりすることができず、2発目の悲劇に見舞われてしまった。これは銃社会であるアメリカと日本とでの違いでもある。

トランプ氏は現職のときに銃撃された場合の行動指導を受けているはずで、すぐに身を隠すことができた。また、アメリカでは直近警護が常識となっているので、シークレットサービスも機敏な行動を起こすことができたのだ。

防弾チョッキを着ているとはいえ、頭は丸裸の自分の身体を盾にして警護対象者を守るとは、シークレットサービスはまさに命懸けの仕事である。

自らの身体以外にも、2023年4月15日に和歌山県で岸田文雄首相が襲撃された事件では、SPが携行型防弾盾(カバンの形をした盾)を使用する光景が見られた。

今回のような狙撃による襲撃でも、このような道具が有効かといえば、実はそうではない。このアタッシュケース型の防弾盾は日本独特のもので、防弾仕様になってはいるものの、刃物などの接近戦を想定している。他の国では見かけることはあまりない。

次ページシークレットサービスの鉄則は「自分が盾になる」こと
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事