このゲームをしている人々の精神病質の特性を評価したらどうなるか、と日本の研究者たちは思った。
サイコパスのほうが合理的で、不公平性を気に掛けないだろうか――自己利益に適うかぎりは?
善か悪か、公正か不正か、公平か不公平かという疑問から自分を切り離すことができるような、冷徹で計算高い爬虫類(はちゅうるい)の脳を、彼らは持っているのか?
調べてみると、まさにそういう結果になった。精神病質の度合いが高い人ほど、利益になるのであれば不公平な申し出であっても気にせずに受け容れた。
皮膚の電気伝導度で情動反応を調べられる
さらに詳しく調べるために、研究者たちは「皮膚伝導度反応」も測定した。奇妙なことに、私たちは情動を喚起されると、皮膚の電気伝導度が上がる。したがって科学者は、皮膚の伝導度を測定すれば、情動的反応をおおざっぱに捉えることができる。
日本の調査では、精神病質の特性がない人が公平な提案を受けると、皮膚電導度はあまり変化しなかった。ところが、彼らを餌食にしようとするヘビのような人間から不公平な提案を受けたときには、激しい情動が湧き起こった。彼らは動揺した。
一方、精神病質の特性が強い人は、提案が公平でも不公平でも、皮膚電導度には識別可能な違いが出なかった。彼らにはあまり影響がないようだった。
別の調査では、やはり同じ最後通牒ゲームをやらせたが、その間、参加者の脳を磁気共鳴画像診断装置(MRI)でスキャンした。その調査では、精神病質の傾向が強い参加者と弱い参加者の間であまり違いがなく、どちらも不公平な提案を同じ回数だけ拒絶した。
だが、その決定を下しているときに、脳の異なる部位が活性化していた。
正常な人々は、不公平な提案を受け容れるか拒絶するかを決めているときに、規範的意思決定――何が正しいか、何が間違っているかの判断――にかかわる脳領域の活動が最も盛んになった。その決定は道徳上のものであり、世の中はどうあるべきかについての情動的手掛かりと結びついていた。
だが、精神病質の検査の得点が高い人々では、この脳領域は比較的不活発なままだった。その代わりに、80円/20円の分割を提案されたとき、サイコパスではずば抜けている脳領域、すなわち怒りと関連した領域が活性化した。
彼らが動揺したのは、これは世の中があるべき姿ではないからではなく、自分にふさわしいと思っている結果が得られなかったのは、彼らに対する侮辱だと見なしたからだった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら