金日成死去から30年・韓国人が流した涙の意味は 南北分断70年超、統一意識も薄れつつあるが…

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女性は話をしているうちに涙声になり、嗚咽し始めた。率直に言って、細かい話は聞き取れなかったが、北にいる身内の話をしているのはわかった。

途中から近くの商店主らしき男性が日本語で通訳してくれた。やはり女性は、離散した家族との再会を心待ちにしていたが、金日成氏の死去により、思いがかなわぬことを嘆いていた。

この男性によると、死去の一報が流れた直後、あちこちに涙を流す人がいたという。「北の体制を認めるわけではないが、金日成という存在は特別な重みがあり、最高指導者の死に、われわれはいろんな思いをめぐらせる」。そんな趣旨の説明を男性はしてくれた。

さらにそれから1カ月ほど後、統一問題にも詳しい韓国紙の幹部に「金日成氏死去時の韓国の市民の涙をどう考えればいいか」と聞いてみた。その幹部は「韓国人の北韓(朝鮮)観は人によって異なる。憎悪や失望、あるいは憧憬かもしれない。涙の意味もさまざまだろう」と語った。

多様化する韓国の統一観

あれから30年。北朝鮮では金主席の息子である金正日氏も死去し、金正恩氏が3代目として権力を世襲した。

カーター氏の訪朝で危機を回避した後、核兵器製造への転用の可能性が比較的低いとされた軽水炉型原発の供与を受ける代わりに北朝鮮が核開発を凍結する「米朝枠組み合意」が結ばれたが、やがて破綻した。

2003年から2007年まで、6回にわたって行われた日米中ロに南北朝鮮が加わった「6者協議」もうまくいかず、北朝鮮はついに事実上の核保有を実現した。

かたや韓国では、左右それぞれの志向を持つ政権が、対話と圧力の配分を変えた統一政策をくり出して迫ったが、結果として目的を達成できたとは言えずに終わってきた。

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