営業マンなしで「年400万本」売れる焼肉たれの秘密 「戸村のたれ」なぜ小さな肉屋のたれが全国へ?
町工場の社長の言葉が、たれの味を守った
―たれは一番多い年でどのくらい売れましたか?
2023年が一番多くて約400万本(1本200gのたれ換算)でした。今年の販売数量は500万本を目標にしています。
―売れすぎて生産が追いついていないくらいですよね?
実はそれに伴って、味の危機が一回あったんです。数年前に販売数がどんどん増えてきて生産が追いつかなくなって出荷調整をしました。出荷量を前年度の約50%に抑えて、一回体制を整えることにしました。
当時は普通に市販されている釜でたれを炊いていたんですけど、どうしたら増産体制が取れるかというところで、釜を大きくしようと考えました。そこで、福岡の釜を作る町工場を紹介してもらい訪問しました。
「今の3倍、4倍の釜を作ってほしい」と依頼すると、社長さんが「作れないことはない、しかし工場長、でかくするのがいいんじゃない。せめて倍ぐらいの釜やないと味の調整が難しくなって、それで失敗して廃業されたところがいっぱいある。だから慎重に」と話してくれました。
助言に従い、ひとまず倍の大きさの釜を作ってもらうことにしました。
まずは実験的に1個だけ作って、たれの味が復元できるか検証しました。そしたら最初は同じ味にはならんかったですよ。材料を倍にして入れても、味が一緒じゃなかったです。だからそれから何回も試作をして、元々のたれの味にしていきました。
倍であれだけ悩まないかんなら、これを3倍にして4倍にしたら、味を守れなかっただろうなと。だから今のたれの味があるのは、その人のおかげだと思いますね。試作してうまくいった段階で、10個発注しました。2022年に揃い今は全部稼働しています。
―多くの食品メーカーを見てきたからこそのプロフェッショナルの意見ですね。
福岡のその地区は、町工場がたくさんあって。釜、ネジ、砥石など、それぞれが専門分野を持っていて、依頼がきたときにそれぞれの工場で作ったものを持ち寄って作る協力体制ができているようです。技術を持っている人たちが、ちゃんとしたものをちゃんと作るっていう商売を続けてらして。いいものを作っていただきました。
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