できる人は、摩擦を恐れず「なぜ?」と問う 危険!「思考逃避」という落とし穴(下)

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――つまり、「時間を聞いてきた」からといって、短絡的に「相手は時間を知りたいんだ」と考えることが、「相手の言うことを鵜呑みにする」ということなんですね。

そのとおりです。BBT大学で「問題解決」の講義を担当している斎藤顕一教授は、「先輩や上司に言われたことが、必ずしも正しいとはかぎらない。言われたとおりに一生懸命仕事をしても成果に結び付かないのは、間違ったことをしているからである」と述べています。特に先輩や上司が、自分の過去の成功体験をベースに指示をしているような場合、本当に大事な課題を特定することは非常に難しいということなのです。

問題解決手法を単なる手法として学んだだけでは、このような先輩や上司の指示に疑問を呈することはできないでしょう。必要なのは、自分自身で瞬時に「なぜか」を自問し、そして本質的な課題が何かを探る。そのうえで、その場で「なぜか」という質問をする能力です。そうすれば、より根源的な課題解決に一気に近づけるようになります。

上司といえども、頭から信じてはいけない

身近な例で考えてみましょう。ある会社の営業担当として働くAさんは、顧客企業から、「こんなニーズに合う商品が欲しい」とリクエストされました。このような場合、あなたがAさんなら、まずはどうしますか?

――ええと……、まずは上司に相談すると思います。

そうですね。Aさんも、上司であるB部長に相談することにしました。B部長からは、「そのニーズには、わが社のXという商品が当てはまるから、それを提案しろ」と言われました。しかしAさんは、顧客企業がこれまでの商品には必ずしも満足しておらず、新しい商品を求めているのではないかとも考えます。さて、あなたがAさんだとしたら、B部長にどう対応しますか?

――私なら……言われたとおり、顧客にXという商品を提案してみると思います。

それが、思考逃避の典型的な症状ですよ(笑)。気をつけてください。上司だからといって、正しい判断を下せるとはかぎらないのですから。納得していなくても、つい「わかりました」と言ってしまうことは、顧客企業のためになりません。あくまで顧客企業の課題を解決するという目的のために、本質的な問題は何かを考えることが必要です。

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