天災と復興の日本史 外川淳著
巨大地震・津波・噴火。繰り返し襲った大災害の中から明治三陸大津波や関東大震災まで13の事例に言及している。1293年の永仁鎌倉地震では大津波が鎌倉の街をのみ込み、慶長伏見地震は秀吉の政治体制を揺るがし、宝永富士山大噴火では農民一揆寸前までいった。科学的知識が十分でない時代、天災は不徳・悪政の為政者を天が罰しているのだと信じられた。だから素早い救援策により人心を治めようとする力がしばしば働いたという。
天災の犠牲者は多くが農漁民だったとはいえ、復興事業に雇われた彼らは賃金高騰で案外潤ったし、いわゆる復興景気でうまく経済が回った例は多い。壊滅的打撃を受けながらも、為政者のリーダーシップと現場の努力でその都度、乗り越え、歴史の分岐点となったこともしばしば。時に無能や不正も散見されたにせよ、復興への力と節度とは日本の貴重な財産であり、歴史に学ぶことの重要さが重く伝わってくる。(純)
東洋経済新報社 1575円
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