トヨタ「アクア」の人気が全く衰えない理由 発売4年目でも販売トップをひた走る

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今年中にもフルモデルチェンジがうわさされるプリウスが、モデル末期になっているのもアクアの販売には有利に働いている。アクアの売れ行きを語るうえで、国内の自動車販売で軽自動車を除くと過半近いシェアを持つ、トヨタの販売網の強さは外せない。

トヨタ4系列で売る強さも

トヨタの国内販売には高級車ブランド「レクサス店」を除くと、「トヨタ店」「トヨペット店」「ネッツ店」「カローラ店」という4系列の販売店があり、そのすべてがアクアとプリウスを扱っている。「トヨタの国内販売会社は地元の名士が経営している優良会社が多く、営業・サービスのレベルは、競合系の販売会社に比べて高いケースが多い」とは、国内自動車販売業界でよく語られる話だ。その強力なネットワークに、総合的に商品力の高い商材が乗っかっているのだから、ある意味、売れて当然という部分もある。

ただ、あえて悪い言い方をすると、「横並び気質のある平均的な日本人が無難に選んでいるクルマ」だという側面はあるのかもしれない。40~50代が購入の中心なのはある程度の財力がある層だからで、まだ所得も高くない20~30代にどれだけ人気があるのかは逆に気になるところだ。

アクアのスポーツモデル「G“G's”」(トヨタグローバルニュースルームより)

アクアの販売に興味深いデータとして、スポーツコンバージョンモデルである「G‘s」の販売比率が高いことが挙げられる。2013年秋に追加されたのだが、2014年には1万5130台を販売。実に月販1000台をゆうに超えるペースである。2015年に入ってからも、上半期で5500台を販売している。

アクアは意外なほどハンドリングマシンだ。重量物を車体の中央寄りに集約したことで、ステアリング操作に対して応答遅れの小さい、一体感のあるハンドリングを身に着けている。プリウスの弟分的な位置づけには違いないのだが、クルマとしての性格として、意外や走りにこだわっている。

走行性能は販売面ではあまり影響していないかもしれないが、この点は見逃せない。半面、たびたび指摘されている動力性能の物足りなさが、依然としていかんともしがたいことは付け加えておきたい。

アクアは走りに期待するユーザーが多いということだろうか。これはプリウスにはないキャラクターだ。圧倒的な低燃費という強力な武器を持ちながら、スポーツコンパクトとしての資質も備えているということだ。

また、2014年秋のマイナーチェンジでは、「X-URBAN」という、SUVテイストに架装したモデルが加わった。発想としては安直とはいえ、アクアに関心はあっても、そもそもの発売年数の経過や「誰でも乗っている」という同質性に懸念を感じていた人にとって、新鮮味を感じさせるモデルであり、このタイミングで登場したことに意義があるといえる。

アクアの販売が相対的に鈍る可能性があるとすれば、次期プリウスの販売後かもしれない。消費者の関心も、トヨタ販売店の意識も次期プリウスに向きやすくなるからだ。ただ、それでも次期プリウスとの価格差から、逆にアクアに目を向けるお客が生まれるきっかけにもなりうる。新車が出れば販売店は新しいお客を店頭に呼び込め、販売機会を広げられる。

フルモデルチェンジまではまだ時間はありそうなアクアだが、当分は高水準で売れ続けそうな勢いを感じさせる。なんだかんだ言って、競合メーカーがアクアの隆盛を止めるのはなかなか難しい。

岡本 幸一郎 モータージャーナリスト

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おかもと こういちろう / Koichiro Okamoto

1968年、富山県生まれ。大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集記者を経て、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。軽自動車から高級輸入車まで、国内外のカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでも25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに有益な情報を発信することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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