トヨタ「アクア」の人気が全く衰えない理由 発売4年目でも販売トップをひた走る

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従来はこうしたコンパクトカーを購入していた層が、多少、高くても商品内容が充実したアクアに目を向けた。アクアと同じような価格帯で、もう少し大きなクルマから、それもトヨタの固定客だけではなく、ライバルメーカーからの乗り換えたユーザーも少なくないだろう。

メルセデスベンツ「Aクラス」やBMW「1シリーズ」などのように、日米欧など先進国を中心として世界全体で自動車のダウンサイジングが進み、小さなクルマにも「プレミアム」感が求められてきている流れが追い風になった側面も少なからずあるかもしれない。

3代目「フィット」が燃費世界一を奪取したが…

そんなアクアの牙城が崩されかけたことがある。2013年秋、ホンダの3代目「フィット」の登場だ。

フルモデルチェンジ(全面改良)で生まれ変わった現行フィットは、内外装はもちろん、エンジン、トランスミッション、プラットフォーム(車台)など、すべてを刷新。新しいハイブリッドシステムを採用することで、最高で36.4km/Lの燃費性能を達成し、当時のアクアから世界一を奪取したのだ。2代目フィットハイブリッド(26.4km/L)とはケタ違いの進化を遂げた。

そもそも初代フィットは、それまで車体後部(リア)に位置するのが当たり前だったガソリンタンクを、車体中央(センター)に配置するセンタータンクレイアウトを採用。小さな車体で最大限の居住空間を実現するなどの商品性や、優れたデザインなどが高い評価を受けている。日本だけでなく120カ国を超える全世界で販売し、これまでの累計販売台数は500万台を超える。

華々しく登場した3代目「フィット」だったが…(撮影:梅谷 秀司)

そのフィットが世界最強の燃費性能を手に入れたのだ。しかも、ホンダは3代目フィットハイブリッドの価格をアクアとほぼ同水準に設定して、真っ向からぶつけた。もともとユーザーの多い初代、2代目フィットからの乗り換えだけではなく、アクアの購入を検討していたような層に訴求。3代目フィットは2013年10月に月販台数でアクアを上回り、普通乗用車の車名別販売ランキングで首位を奪い返す。もちろん新車効果もあっただろうが、2014年半ばにかけてフィット優勢の展開が繰り広げられる。

ところが、その後はアクアが再び隆盛を取り戻す。アクアは2013年12月にマイナーチェンジ(一部改良)で、燃費性能を37.0km/Lに高め、燃費世界一を奪還した。これに加えて、フィットの新車効果の一巡もあるが、最大の要因はフィットの「自滅」だ。3代目フィットから採用した新型ハイブリッドシステムに不具合が連発。短期間で計5回に渡るリコール(回収・無償修理)を出してしまったことだ。

これでフィットに一定のネガティブなイメージが植え付けられてしまった側面は否定できない。トヨタ、ホンダ以外にはコンパクトハイブリッドを持っている日本車メーカーはなく、アクアは「敵失」でこの分野の第一人者の地位を一層強固にした。

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