具体的には、出退勤のルールが厳しい、昇進の機会がない、日本人の社員が英語を使えないなど、日本独自のルールや文化が挙げられます。先の給与交渉の例からもうかがえますが、日本企業はルールを厳守しすぎるあまり、社員の利便性や快適性をおざなりにしているように思われます。
そのような日本人の国民性はひとつの長所ではありますが、そのために優秀なエンジニア人材を獲得できず、プロジェクトが失敗する、そもそもスタートできない……というのでは、本末転倒です。
つまり日本企業は、エンジニア採用の本来の目的――優秀なエンジニアを採用してプロジェクトを成功させることを脇に置いてしまい、ひたすらコストを抑えようとして、採用の機会を逃しているといえます。
日本よりはるかに柔軟な海外企業
海外の会社は、日本よりはるかに柔軟です。
なぜかといえば、先に述べたような「優秀なエンジニアがいなければ、プロジェクトがスタートできない」という強い危機意識があり、エンジニアに気持ちよく仕事をしてもらうことが、社の未来に関わる重要な要因であることを理解しているからです。
そのため、社内ルールを変更するなどして、採用したいエンジニアの希望に合わせて対応しています。
こうして日本企業は迷走を続けているのですが、結果的に商品の品質が低下するという問題が起こります。
わかりやすいのが、コロナの追跡アプリ「cocoa」の開発の例です。このアプリの完成度が低く、問題となったことを覚えている方も多いでしょう。
肝心の陽性者との接触情報が配信されないというトラブルが起こりましたが、アプリの意義を考えれば致命的です。驚くべきことに、このような致命的な不具合が4カ月も放置されていました。
これには、IT業界の多重下請け構造という根深い問題が関わっています。
このアプリ開発においても、大手企業から中小、零細企業へと、何層にもわたって仕事が流れ、開発を受注した企業がその事業費の94%を他社に支払い、再委託していたことがわかっています。
多重下請け構造では、委託先もさらに他社に仕事を委託します。そのような状況で、いったい誰がプログラムを書いているのかがわからなくなっていたのではないでしょうか。
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