日テレ"敏腕P"がテレビマンを辞めた理由 三枝孝臣氏が描く、未来のメディアの理想像

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もう1つ、テレビ局の未来を考えるときにはずせないのが、インフラ産業であるということです。インターネットという安価なインフラが出てきたことによって、地上波で全国放送をするために整備された堅牢で高価なインフラを、テレビ局が支え続けられるのかというのも問題になります。今後、超高精細の4K、8Kへの投資を回収して、事業をやっていけるのかという危機感はありますよね。

新会社で目指すものとは?

――7月には日テレでの同期でLINEの元社長である森川亮氏が4月に設立したC Channelの取締役に就任し、自ら起業してアブリオも設立しました。どのようなことをやっていくのでしょうか。

C CHANNELは、タレントやモデルなど約100人がファッションやメイク、食べ物、旅行などの情報を約1分間の動画で紹介するメディアプラットフォームです。「コンテンツのクオリティにこだわる」ということで、私が“コンテンツ屋”として参加することで、ネットとテレビコンテンツの要素を混ぜ合わせて面白いことができるのではないかと思い、取締役に就任しました。

実は、起業して私がやりたいと考えていることは、33年続いた『ズームイン!!』の後番組、『ZIP!』を企画した2011年の時点でやりたかったことでもあります。ZIP!は、1つのコンテンツとして「明るくてハッピーで、思いっきり華やかな番組」にしようと考えた一方で、「プラットフォーム」にしようと考えました。

どういうことかというと、約2分間のコーナーでアニメ「おはよう忍者隊ガッチャマン」を、約3分間の料理コーナーで「MOCO'Sキッチン」を放送するなど、ZIP!という番組の中に短編番組を乱積みする形で構成したのです。通常の番組は、クライアントや番組編成の問題をいろいろとクリアしなければ放送の外に切り出して活用することはできませんが、短編番組なら1つのコンテンツとしてネット、BS、CS、書籍とあらゆるメディアに接触点を作ることができると考えました。

コンテンツ流通においては、ユーザーの関心はコンテンツそのものにあり、どこからコンテンツを得るかという点は問題ではない、というコンテンツオリエンテッドな考え方で構想した企画です。ニュース、情報以外のコンテンツは放送1回だけの使用ではもったいない。

さまざまな出し口にコンテンツを切り出していく、コンテンツを中心にメディアを横断して組んでいく、これを私は「メディアデザイン」と呼んでいます。アブリオでは、ここを進化させたいと考えています。

中原 美絵子 フリーライター

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なかはら みえこ / Mieko Nakahara

金融業界を経て、2003年から2022年3月まで東洋経済新報社の契約記者として『会社四季報』『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』等で執筆、編集。契約記者中は、放送、広告、音楽、スポーツアパレル業界など担当。

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