日本人は、「自家保険」の合理性を知らない

町内会で保険を作る、という選択肢がある

保険プランは、簡単でわかりやすいものから始めます。ここでは、「亡くなった場合に葬儀代として200万円を支払うプラン」とします。そして期間は1年。自動車保険のように、毎年一度、加入の是非を住民に確認すればよいのです。

掛金はどのように決めればいいのでしょうか。保険会社では、アクチュアリーと呼ばれる保険数理の専門家が、複雑な計算をして保険料を決めています。でも、町内会保険ではそんな難しいことをする必要はありません。住民にアンケートを配り、ここ数年間で亡くなった人の数、町内会保険への加入の意向など、大まかなデータを集めさえすればよいのです。

過去3年間、町内会で亡くなった人を9人としましょう。すると、1年間で平均3人の死亡者です。一人当たり200万円を支払うとすると、年間で600万円(=3人×200万円)の支払いが予想されます。

アンケートの結果、町内会保険に加入してもよいと考える人が、600人いたとします。掛金を年2万円とすると、年間収入は1200万円(=2万円×600人)が見込まれます。収入が1200万円で、支払が600万円ですから、年間で600万円が余る見通しになります。

このように、掛金を2万円でスタートすれば、取りあえず収支は余裕が持てそうです。翌年以降の状況を見ながら、いつでも掛金を柔軟に変えていけばよいのです。残ったおカネは、将来の支払いに備えて積み立てておいてもよいし、配当金として加入している住人に返金しても構いません。

これで十分です。何も保険会社のような複雑な数理計算をする必要などありません。

規定を作り、事務分担を決めておく

次に、「町内会保険規定」を作成しておきましょう。保険の「約款」にあたるものです。保険の対象者、プラン内容、掛金、町内会保険の運営方法などをしっかりと文書化しておきましょう。それから、保険加入者の名簿、掛金の集金方法、保険金支払方法をルール化し、実務担当者をしっかり決めておきましょう。

最後に、死亡者数が予想を上回り、年間の掛金では保険金が払えない事態に備えた対処法を、きちんと決めておかなくてはなりません。どのような場合でも、確実に保険金が支払われなければホンモノの保険とは言えないからです。

財源が不足した場合は、保険加入者全員から追加で不足分を徴収する方法、毎年の剰余金を積み立てておきその財源から不足分にあてる方法などが考えられます。いずれにしても事前に話し合ってルールを決めておくことが大事です。

これで「町内会保険」ができあがりました。自分たちでつくってみると、保険はとても簡単な金融商品であることがわかります。ただ、そこに保険業法とか行政指導、保険数理、コンプライアンスだとかが入り込んでいるため、やたらと複雑で専門的なものとなり、消費者にわかりにくいものになってしまっているのです。

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