日本人は、「自家保険」の合理性を知らない 町内会で保険を作る、という選択肢がある

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自分たちでつくる保険は、米国ではセルフ・インシュランス(自家保険)と呼ばれています。文字どおり、保険会社に頼らず自分たちで保険をつくるというものです。保険会社の商品に満足ができない、保険会社に引受を拒否される、そのような場合に自分で保険をつくってしまうのが米国流です。生保業界、損保業界と並ぶ大きな業界団体をつくり、大半は各州の保険庁の監督下にあります。

米国では日本と違い、保険契約管理、保険数理、再保険など保険会社を構成するいろいろな業務が、バラバラなパーツとして売られています。だから、消費者は自分の保険に必要な部品を買い集め、ちょうどプラモデルを組み立てるように、自分好みの保険をつくることができます。

そして、米国では保険と自家保険がうまく共存しています。国の社会保険制度を民間の保険会社が補完するように、自家保険が民間の保険を補完しています。

日本の自家保険の不幸な歴史

日本では1980年代の後半、シティバンクが自家保険ビジネスを始めた経緯があります。自分たちの市場を脅かすと考えた保険会社の反発があり、まもなくシティは撤退しますが、自家保険の動きは静かに拡がり続けます。ただ、日本では保険業法に自家保険についての明確な記述がなかったため「グレー」な保険(「無認可共済」)と呼ばれ、2005年の業法改正により規制されることになります。その結果、多くの自家保険制度が解散し、一部は少額短期保険会社(「ミニ保険会社」)と呼ばれる新しい形態の保険会社となりました。

法的に整理されたことにより、企業の従業員、労働組合の組合員と家族、学校の学生たち、町内会の住民、そして1000名以下の団体ならば、誰でもが自分たちで保険をつくることが日本でも認められました。自家保険はもはや「グレー」な保険制度ではありません。

今のところ、自家保険をつくろうとする大きな動きは見られませんが、これは米国のように、保険関連サービスを提供する会社が日本には少ないこと、そして自分たちで保険をつくれるということがまだ一般に知られていないことが原因でしょう。

今後、既存の保険に飽き足らない消費者が、新たな動きを起こすことは十分に考えられます。保険会社に手数料として保険料の半分程度を取られてしまうことに納得できない消費者たちが、自分たちで安い保険をつくってみよう、と考える日がやってくるかも知れません。それは決して、遠い日ではないように思われます。

橋爪 健人 保険を知り尽くした男

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はしづめたけと / Taketo Hashizume

1974年東北大学卒、1984年米国デューク大学修士。日本生命保険に入社後、ホールセール企画部門、米国留学、法人営業部門を経て米国日本生命副社長。帰国後、損保会社出向、ジャパン・アフィニティ(保険ブローカー会社)代表取締役を経て2004年独立。企業向け保険ビジネスのコンサルタントとして活動。著書に『日本人が保険で大損する仕組み』(日本経済新聞出版社)

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