積水らの定額リフォームは「儲からない」? アマゾンとの取引開始で浮上する課題

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賃金には地域差がある。現在、リフォームサービスに対応している地域内で、総務省の統計をもとに大工の1日当たりの手間賃を比較してみると、最も高い川崎市が2万5388円であるのに対し、いちばん安い茨城県日立市は1万3000円。実に2倍近い差がある。仮にあるリフォーム工事の組立・設置に3人、3日間かかるとすれば、川崎市では22万8492円。一方、日立市なら11万7000円ですむ。

大工の人件費は、地域ごとに差がある(Rina/PIXTA)

つまり、川崎市や静岡市など人件費が相対的に高い地域での施工が増えると、それだけ採算は悪化する。各社とも施工は協力会社に任せるとしているが、手間賃が高い地域は協力会社が泣くことになるのか、それともそのままストレートに出品社にはね返るのかは、はっきりしない。

「何十万円のリフォームでは儲からない」

今回の仕組みでは、アマゾンで商品を申し込んでから、現場での調査、工事内容の打ち合わせが終わり、契約を行うまでは料金が発生しない。

しかし、リフォームの厄介なところは、実際にリフォーム箇所を開けてみるまで何が起こるかわからないことだ。解体してみたら配管の位置が設計図と異なる、本来あるはずの間柱が入っていない、など想定外の事態が起きることはままある。そうなれば追加工事が必要となる。

ソニー不動産は、アマゾンのページ上ではっきりと「施工に際し追加工事が必要な場合は、別途お見積もりのうえ提案」と書いている。積水ハウスも同様の注意事項を挙げている。ただ、これはあくまで工事箇所を解体する前の話。たとえば、現場確認で床を支える根太が腐っていることがわかった場合、腐った部分を撤去して、新たな床板を組み直す必要がある。このような事態には、標準工事で対応できない。

定額パッケージと謳っている以上、契約締結後、つまり着工後に追加工事が必要となった場合は、出品社の負担となるはずだ。ここにも採算悪化につながる可能性が潜んでいる。

積水ハウスは「定額パッケージで何十万円というリフォームでは儲からない」とはっきり言う。同社の場合、これまでは自社の物件を新築で購入した顧客に対するリフォームが中心で、それ以外は金融機関や不動産屋からの紹介にしか対応してこなかった。今回の取り組みで新たな顧客を開拓し、将来さらなる本格的なリフォームにつなげることで、業績を上げたいという思惑がある。

実際に購入してみようとすると、画面の商品が自宅にぴったり合うのか、採寸するだけでも素人には難しい。現地調査でサイズや追加工事の有無などを確認し、結局申し込みをしたのとは違う商品を契約する場合もあるだろう。チャン社長は「ワンクリックでの商品購入」というが、実はリフォーム各社の相談窓口の開設、という見方もできる。

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