税と社会保障の抜本改革 西沢和彦著 ~必要な改革を包括的かつ具体的に論じる
日本の社会保障制度は、建前上、社会保険料で運営されている。しかし、保険料を支払う現役世代は減少し、給付を受け取る高齢者が増加し保険料だけでは賄えない。国庫から大規模な資金が投入されているが、税収は恒常的に不足しており、公的債務の増大を前提に運営されていると言っても過言ではない。
消費税は1999年から基礎年金や高齢者医療、介護に優先的に充当されることになったが、今や不足額は年10兆円に達する。この穴埋めに2010年代半ばまでに消費税を5%引き上げるというのが、政府が進める「税と社会保障の一体改革」だが、本書が論じるのはその先の抜本改革である。一般会計の10兆円の穴を埋めることも喫緊の課題だが、そもそも社会保険料で財源を集める現在の制度設計が行き詰まっているという。
たとえば国民健康保険。本来は自営業者を対象とした医療保険制度だが、被雇用者でありながら所得が少ないために協会けんぽに加入できない人の受け皿になっている。協会けんぽなら保険料は労使折半だが、国保はすべて本人が負担するため、保険料が支払えず無保険となる人も少なくない。公的年金で、被雇用者でありながら、制度、執行の不備から厚生年金に加入できず、国民年金への加入を余儀なくされている人が多いのも、まったく同様の構図である。