電子書籍の向かう先--主役不在で離陸せず、シャープは専用端末撤退…

これに対し、「出版のプロが異業種に負けるわけにはいかない」とトゥ・ディファクトの小城武彦社長は火花を散らす。同社は大日本印刷と丸善CHIホールディングス、NTTドコモの合弁。出版社との信頼関係を武器にコンテンツ数は国内最大規模を誇り、「移動中に電車で読むなら、スマートフォンが最適」(小城社長)と汎用端末に特化する。

大手3連合が存在感を強める中、彼らが共通しておそれるのは、米国で大成功を収めたアマゾンの日本上陸だ。今や紙の書籍を上回る95万コンテンツ以上を取り扱うガリバーは、日本市場への参入がささやかれては消えてを繰り返している。

理由は、出版社との交渉難航が挙げられる。米国ではアマゾン・ドット・コムが価格決定権を持ち、自由に値付けできる。ユーザー主体のサービスが受け入れられ、市場拡大を牽引してきた。日本は再販制度で本の定価販売が守られているが、電子書籍は例外となり価格破壊が起こることを出版社はおそれている。

このため日本の電子書籍を見ても、新刊との同時リリースはごくわずか。書店の新刊コーナーから外された本が電子化されても、読者にとって魅力がない。コンテンツ不足が最大の妨げとなっているのだ。ある電子書籍会社の役員は「出版社に定価販売を守ると説得し、新刊を提供するようお願いしている」と必死だ。

音楽配信で成功したアップル「iTunes Store」も、日本では当初見込みより普及しなかった。国内レコード会社が慎重で、有力なコンテンツが集まらなかったのだ。国内の音楽配信市場は一時的には伸びたが、現在はCD販売とともに右肩下がりとなっている。

電子書籍も同じ道をたどりかねない。10年の出版物売上高は1兆8748億円と、6年連続で前年割れが続く。日本の旧来意識が変わらなければ、ガリバーが上陸してもしなくても先行きは霧の中だ。

(本誌:前田佳子 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2011年9月10日号、一部加筆)

※記事は原則として週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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