「デフレ」の象徴が、稼ぎ頭であるNTTドコモだ。
通信業界では菅前政権下で政府主導の携帯電話料金の値下げが進み、大手各社が低廉な料金プランを導入した経緯がある。「携帯料金は安くて当然」という意識が広く浸透し、インフレ下であっても値上げに踏み切るのは難しい情勢が続く。とりわけドコモは値下げの影響から抜け出せず、1ユーザー当たりの平均売上(ARPU)は今年度も減少が見込まれている。
島田社長も5月の決算説明会で、「価格転嫁については必要なタイミングで視野に入れたいが、今の段階ではあまり考えていない」と述べた。海外の機関投資家の視点からすれば、インフレ影響を価格転嫁で吸収しにくい事業環境が嫌気されている可能性がある。
具体的な成長戦略が見えづらい
NTTは2023年に発表した中期経営戦略において、成長分野に5年で約8兆円を投資し、2027年度にEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)を4兆円(2022年度は3.3兆円)に拡大する目標を掲げた。
注力する次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」を着実に前進させつつ、金融など非通信事業の強化や、データセンターの拡張を成長の軸に据える。ただ、こうした中長期的な成長戦略が「具体的に競争力がある形になるかが見えない」(松井証券の窪田氏)部分もある。
株主総会で島田社長は、数週間前にグループ約950社による社長会を開催したことに触れ、「各社の社長も気合いを入れて、中期経営戦略を着実に進めることにベクトルを合わせてきた。しっかり業績を高めて株価を上げるように一生懸命努力したい」と決意を示した。
新NISAを代表する株式銘柄となり、個人株主を含め多くの投資家から期待を背負うことになったNTT。今後、成長戦略をより具体化させ、株価を反転回復させていけるかどうかが問われることになりそうだ。
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