能力主義で入部を制限することもできますが、それはしたくないんです。ロボットを作る方法、研究方法、分析方法、表現方法が学べるので、学年が上がるにつれて必要とされる力の基本がロボットを通じて学べるようになっています。技術的なことだけなら仕込めばいいと思いますが、世界と渡り合うためには、生み出す力を持った人材が必要だと考えています。
また、この活動をサポートした奈良教育大学の学生も、生徒への指導・経験を通じて綺麗な英語の発音だけではなく、いかに人に伝えるかが重要だということを学んだようで、単に専門知識を伝達するだけではない気づきがあったようです。
世界で活躍する人になるためのヒント
――最後に、これからグローバルで活躍するために、どんな資質が必要だと思いますか。
すぐに教えてしまうと、子どもが与えてもらうことが当たり前だと思ってしまうんです。そして、創造する側の楽しさを知らない子どもが多いと感じます。
それが分かっていないと、大学に入って多くの時間があっても、アルバイトや遊びで貴重な時間が費やしてしまいます。大学が起業の場になっているようなシリコンバレーとの差はそこにあるのではないでしょうか。
子どものころからモノを作る楽しさを体験したら、大学に入った瞬間に自分が作りたいものをやりたくなりますよね。戦後、モノが無い時代はモノ作りする必要がありました。しかし今はモノが増えていて便利すぎるためその土壌がありません。人工的に作るしかない状態です。ロボット教育はその状態を打開するひとつの方法だと考えています。モノがなかったらもっと人は賢くなると思っています(笑)。
WROでは海外のチームとも交流があったのですが、日本の教育との違いに驚きました。日本では、あの科目で何点取れたかとか、どういう偏差値の大学に入ったとか、数字を追いかけている状態ですが、海外では必ずしもそうではないのです。
現在の学校教育の中で、教師の中には「俺についてくればこの大学に合格する」と豪語する方もまだいらっしゃって、生徒に数字だけを追わせる人もいます。しかし、これからの社会はそういうことだけではないですよね。
ただ、まだそれをひっくり返すだけの土壌が日本にはありません。生徒の前にプログラミングの本をバサっと数冊置いて、「見てみれば」とだけ言っておくときがあります。また、プログラミングを自分たちで探してねと生徒に伝えます。
生徒が「先生冷たい」「先生いじわる」と思わずに、それを楽しめる関係を築けることが大切だと感じています。それは学校だけで構築されるものではなく、家庭教育も重要です。いくら学校で私がそのように伝えても、家で親が「教えてくれないなら辞めたら」と生徒に言ってしまうと、子どもたちもそう思ってしまうんです。
優勝したその日の晩に子どもたちを集めて言いました。「早く忘れよう、もっと楽しいことを探そう。世界一で満足したら面白くない、もっと面白いことをしよう」と話したんです。世界一というのは、もっと楽しいことを探すプロセスでしかありません。こう話したことで、子どもたちは次回思い切って負けられます。
もちろん優勝を目指しますが、子どもたちが思い切り楽しくできたなら負けてもいいと思います。世界を舞台に負けた後にどう思うか、どう行動するかが重要で、それが将来グローバルで活躍するために必要な過程になると考えています。
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