時代は経済小説から政治小説に移った--『コラプティオ』を書いた真山仁氏(作家)に聞く
──単行本化に当たって大幅な書き直しをしたそうですね。
普通、連載が終わって単行本にするのに、原稿用紙で100枚も差し替えれば相当なもの。それを500枚差し替えた。約1年間連載をして、最終回の締切日が今年3月14日だった。その3日前に大震災、原発事故が起きた。3・11以降に起きている政治の混乱や、宮藤の事故後の行動、それに政権奪取に至る復興案がなくては、かけ離れた絵空事の印象を与えかねないので、単行本では織り込んだ。
ストーリーは、宮藤の強さの象徴として総合原子力メーカーの一つを国有化し、原子力産業を垂直統合してパッケージで世界に売り込む。エネルギーをベースにした国家資本主義を敢行する総理を軸に、垂直統合ならば原料ウランも取り込む必要があることから、その利権をアフリカでフランスや中国と争うという物語になっている。
──連載では近未来の設定で、時期は明示していません。
単行本でも同様だ。
将来的には日本は、また原発産業に真正面から向き合わなければいけなくなるという判断が前提にある。世界最高峰の原発技術を輸出することが、日本が生き残るためには必要になるのではないか。逆に事故が起こったことにより、事故を起こした国だからこそ安全を訴える小説が必要になったともいえる。