時代は経済小説から政治小説に移った--『コラプティオ』を書いた真山仁氏(作家)に聞く
──宮藤の福島の「3・11公園」での演説が印象的です。
連載では、広島の原爆ドームの前で演説して、核爆弾投下を受けた国だからこそ、核の安全性を最も高め、かつ原子力発電の安全性を世界に訴えないといけないと演説させた。単行本では、その演説の舞台を、がれきを埋め立て海に陸地を張り出させた、廃炉を進める発電所を背景にした「自戒の丘」に移した。
この演説が、この小説の生命線だ。事故の直後にこの小説を出すのは、特に原発の事故によって被害を受けた人々にとって承服できない部分もあるはず。それでも国としては前に進まなければいけないという想定で演説をさせた。
──政治主導?
『ハゲタカ』から『レッドゾーン』まで、ハゲタカ3作では経済をフロントに出して、バックに政治の葛藤を入れている。それでも、ほかの経済小説と違って政治色をあちこちちりばめてある。『ベイジン』に至っては中国政治そのものだが、内容はエネルギー小説といえなくもない。経済と政治がばらばらに動くことは特に中国ではありえないが。
この本『コラプティオ』は、その政治をフロントに出した第1作。コインの裏にいた政治が表に来て、逆に経済はコインの裏側として、この国を支えるために政治が大いに重要という考えを出せたらと。