時代は経済小説から政治小説に移った--『コラプティオ』を書いた真山仁氏(作家)に聞く
カリスマ総理主導で原子力発電所の輸出産業化を目指す近未来小説が、時が時だけに話題と波紋を呼んでいる。著者は渾身の力を注いだ政治小説という。
──政治小説ですか。
民主党とおぼしき政党を倒して宮藤隼人は総理大臣となる。初出の文芸誌(『別冊文芸春秋』)連載は去年の2月から始めている。その準備時から、民主党は国民に大きな不信感を抱かれるだろうと読んで、執筆の前提として政権交代を織り込んだ。本当の意味の強いリーダーシップと、行動力のある政治家が求められるだろうと。リーダーシップのある総理を主人公として作り出し、一方でカリスマ総理の危うさも並行して込めた。
──強いリーダーシップは演説に集約されています。
執筆のほとんどの時間を宮藤という男を磨き上げるために費やしたといっていい。要所要所で演説を組み入れてある。その原稿は、演説専用のノートを作って何度も書いては直し、納得できたところで、演説文として書き加えた。そのために、たくさんの演説集を読み、DVDを見て研究した。中でも外国人の演説を参考にしている。
執筆の底流として、日本に蔓延している政治不信や政治へのあきらめを、宮藤を登場させることで面白さや期待感に変えることを目指した。ただしそれだけでなく、政治に無関心のままだとこの国が危ういほうに行ってしまいかねないことも示した。それが、汚職・腐敗という意味のラテン語のタイトルに込められている。