対話の現場/絶対に許せない相手と対話を成立させるには

驚くべきは、A国人の同僚の対話的態度である。本人にとっての最善の解決策(猫を安楽死させる)が不可能とわかれば、次善の解決策(猫を快適に移動させる)を目指して協働する。しかも、「人として許せない部分」について、友人とは最後までわかりあえないまま、粛々と協働作業を進めているのだ。

友人の考えに対して、中途半端に理解を示していないところもよい。自分にとって絶対に許せない考えについて、真摯に「受け止める」必要はあるが、何でも寛大に「受け入れる」必要はないのだ。相手の「わかりあえない部分」は仕方のないものとして留保し、残った「わかりあえる部分」で最低限の人間関係を維持できるかどうか。これが対話的態度の基盤となるのである。

この猫をめぐる騒動において、友人は「安楽死」という言葉を聞いた瞬間、同僚のことが理解不能の怪物に見えたという。もはや、わかりあえる「あなた」ではない。わかりあいたくもない「やつら」へと変じたというのだ。

一方、同僚は何があっても「わたし」と「あなた」の関係を維持した。いや、動物虐待ということで、友人に対してそうとうに腹を立てていたらしいから、内心では「やつら」と思いながらも、最低限の人間関係を対話的に維持したのかもしれない。

同僚の対話的態度のかいあってか、友人と同僚との人間関係は、今でも海を越えて続いているという。

キャリア・教育の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 晩婚さんいらっしゃい!
  • ほしいのは「つかれない家族」
  • 買わない生活
  • グローバルアイ
トレンドライブラリーAD
人気の動画
「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由
「人のために働く職業ほど低賃金」な根深い理由
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
商社大転換 最新序列と激変するビジネス
商社大転換 最新序列と激変するビジネス
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
激動相場に勝つ!<br>株の道場

6月18日発売の『会社四季報』夏号が予想する今期業績は増収増益。利益回復に支えられる株価が上値を追う展開になるか注目です。本特集で株価が動くポイントを『会社四季報』の元編集長が解説。銘柄選びの方法を示します。

東洋経済education×ICT