人として許せない! 友人は心底から憤った。友人はA国に10年以上も住んでいた。A国人の同僚とも、長年にわたって一緒に仕事をしており、気心の知れた仲のつもりだった。同僚は犬を飼っていて、ペット談義をきっかけとしたプライベートな付き合いもあった。それなのに、「殺せ」とは! やはり外国人とはわかりあえないのか……。
友人は同僚と絶交するつもりで、言い放った。「あなたが何と言おうと、猫を日本に連れて帰る」と。
ところが、この言葉に対する同僚の反応もまた、予想外のものであった。「飼い主が決めたのだから仕方がない」ということで、今度は猫をできるだけ快適にA国から日本に移動させるべく、献身的に働き始めたというのである。
まず、A国の航空会社と交渉し、猫を客室内に持ち込めるようにした(通常はペット用の特別な貨物室に収容される)。猫のストレスを可能なかぎり軽減させるためだ。
また、日本とA国双方の検疫当局と交渉して、A国で作成した猫の健康診断書を提出することを条件に、日本における動物検疫の免除を勝ち取ったのである。
ただ、献身的に働きながらも、同僚は友人に言い続けていたという。「猫を日本に連れて帰るなんて、あなたは間違っている」と──。
やや長いエピソードの紹介となったが、これは対話による協働の事例として興味深い。
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