買収や提携にも躊躇せず抗がん剤を第3の柱に--畑中好彦・アステラス製薬社長
国内2位の製薬企業のトップに就任した畑中好彦・アステラス製薬社長は、旧藤沢薬品工業時代に旧山之内製薬との合併交渉にかかわる一方、アステラス製薬でも経営戦略の策定、海外企業の買収など、つねに経営の中枢に居続けてきた。主力製品の特許切れや医薬品市場の成長鈍化、経済環境の激変に直面する中で、いかに成長シナリオを達成していくのか。畑中社長に聞いた。
──厳しい環境下での社長就任となりました。
市場環境が大きく変わっていることは事実だが、2006年に発表した「VISION2015」で打ち出した方向性は変わっていない。ここ1~2年の市場環境の変化も想定した範囲内で、慌てる必要はない。
当社は強みを持つ専門領域に経営資源を集中することで、「グローバル・カテゴリー・リーダー」(GCL)としてのビジネスモデルを追求してきた。すでに泌尿器と移植・免疫の2領域ではリーディングポジションにある。それらに加えて、がん領域を、注力すべき第3のカテゴリーに位置づけている。
──泌尿器と移植・免疫領域では、排尿障害改善薬ハルナール(米国名フローマックス)と免疫抑制薬プログラフが相次いで米国で特許切れに直面、ジェネリック医薬品(後発医薬品)の攻勢にさらされて売り上げを大きく減少させました。
特許切れによって米国では影響が出たが、プログラフについては1日1回投与の製剤の開発により、日本や欧州、アジアなど米国以外の市場で順調に売り上げを伸ばしている。
泌尿器領域では、過活動膀胱治療薬のベシケアが全世界で1000億円規模の主力製品に成長している。新たな作用機序の過活動膀胱治療薬ベタニスも、7月に日本で薬事承認された。欧米でも9月までに承認申請予定で、14年度にはベシケアと合わせて全世界売上高1550億円を達成したい。ベタニスは日本では適応範囲について当局から制限が設けられたが、戦略を変えるほどの影響はない。