野菜も旅も!パナソニック、eコマース参入の狙い 2040年を見据え、藤沢で地産地消型新ビジネス

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とはいえ、関係作りは少しずつ進んでいる。課題だった商品の仕分け作業では、新たに地元の担い手が現れた。

当初はパナソニックHDの社員が仕分け作業に従事していたが、藤沢市内の社会福祉法人「藤沢育成会」が運営する障害者の就労支援事業所「みらい社」が業務を引き受けた。2024年4月以降、毎週金曜日の午後1時から2時にかけて、各ユーザーの注文ごとに3~4人のスタッフが商品を仕分けし、袋詰め作業をしている。藤沢育成会は、前出の三浦さんが、パナソニックHDに紹介した。

藤沢市内の障害者就労支援事業所「みらい社」での商品仕分け作業。「ハックツ!」と連携して工賃アップを目指す(撮影:大澤誠)

障害者の就労支援事業所が「ハックツ!」の仕分け作業を担う意義について、みらい社施設長の三嶌悟さんは次のように語る。

「パナソニックHDという大企業と一緒に仕事をすることで、当事者にとっても自信になる。課題である工賃の引き上げにもつながることを期待している」

地元ホテルと連携、新たな藤沢観光の構築目指す

地元のホテル関係者も「ハックツ!」との連携に期待を込める。

「ハックツ!」では2024年8月に江の島周辺でのウォーキングイベントを企画。そこでは地元インストラクターによるヨガ体験ツアーや藤沢市内のホテルでのサウナなど、新たな「ウェルネスツーリズム」の実現を目指している。

「ハックツ!」との連携について、「ホテルを利用しながら、これまであまり知られていなかった地元エリアを楽しむといった、従来の湘南・鎌倉観光とも異なる新たなエンターテインメントを実現させたい」。

「8(エイト)HOTEL湘南藤沢」を運営する湘南レーベルの谷内香取締役はこう期待を込める。

「8HOTEL湘南藤沢」を運営する湘南レーベルの谷内香取締役(左)。地元での旅をコンセプトにしたイベントを企画している(撮影:大澤誠)

「ハックツ!」が「ジモタビ」と称し、同ホテルとタイアップして2024年3月3日に実施した、「NEKTON FUJISAWAでの地元産はるみ米のおにぎり作り⇒にこにこ農園での農園ヨガ体験⇒キクイモ掘り、8HOTEL湘南藤沢でのスパ体験および食事体験」のツアーには、10人の地元在住の女性が参加。1日を楽しんだ。

「参加者の満足度は高く、地元を盛り上げるうえでも有意義な取り組みだった」と谷内さんは振り返る。

一時的に潮が引いて陸続きになる「トンボロ」と呼ばれる現象に着目し、徒歩で江の島に上陸し観光を楽しむイベントを、両社は8月に計画している。

パナソニックHDが「ハックツ!」を通じて実現しようとしている「地産地消」ビジネスは、言うは易く、事業化は簡単ではない。その取り組みはまだ手探りの段階だ。

そうした中、「ハックツ!」に興味を示す地方自治体も出てきた。パナソニックHDでは、東京都内や四国の自治体とも協議を進めている。いずれの自治体も「2040年」のコミュニティのあり方を真剣に考える時期にさしかかっている。

「今までの当社はハードウェアの売り切り型をビジネスの中心に据えてきた。このビジネスでは、いかに部品を安く仕入れ、製品を高く売るかが基本だった。2040年を視野に入れた今後は、お客様とずっとつながる、持続可能性の高いビジネスを確立する必要がある」(前出の村瀬氏)

はたしてその手掛かりをつかめるか。新事業の行方に注目したい。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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