野菜も旅も!パナソニック、eコマース参入の狙い 2040年を見据え、藤沢で地産地消型新ビジネス

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かつて藤沢市にはテレビなどを製造するパナソニックにとって関東初進出となった家電工場があった。しかし工場は2009年に閉鎖され、その跡地は「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(SST)」として住宅地に生まれ変わった。

「ハックツ!」も当初は展開エリアをパナソニックが開発にかかわったFujisawaSSTを中心とし、その周辺を含む市内の限定的なエリアの顧客を対象にスタート。そこでの試行錯誤を元に、2年目の2024年度は市内全域への展開へとステップアップを狙っている。

この間、ニーズが少なく、コストが合わないことから宅配での受け渡しをやめる一方、市内の各地に受け取りスポットを開設し、ユーザー自らが商品を取りに行くスタイルに変更した。顧客が自ら商品を取りに行くことで、ユーザーは配送料を払わなくて済む。受け取りスポットとなるコワーキングスペースやホテルなどは、新たな集客も期待できる。

地元農家には配送の手間がないのが魅力

地元の農家など、加盟店の開拓にも力を入れている。地元の農家にとって、どんなメリットがあるのか。

にこにこ農園の井上宏輝さん。「ハックツ!」のイベント企画にも協力を惜しまない(撮影:筆者)

藤沢市で有機農業を営む「にこにこ農園」の井上宏輝さんは、これまで得意先の飲食店や個人宅に取れたての野菜をトラックに積んで届けてきた。夕方までに農作業を終えた後、一通りの配送を終えると自宅に戻るのは午後9時頃にもなるという。47歳の井上さんは、「だんだん体力的にも厳しくなってきている」と打ち明ける。

「『ハックツ!』の場合、配送を担ってもらえるのでとても助かる」と、井上さんは評価する。これまで井上さんは、キクイモ掘りなど農作業体験イベントにも積極的に協力し、「ハックツ!」の認知度向上にも一役買ってきた。

他方で「ある程度、安定した注文がないと厳しい」と課題も指摘する。現時点では、「ハックツ!」の受け渡しは週1回の金曜日。にこにこ農園にも、毎週確実に注文が入るわけでもない。

「有機農業の特性からも、お客さんにはいいときも悪いときも継続的にお付き合いしてもらえることを望んでいる。有機農業の特性やその難しさなど、生産者と消費者のお互いが理解を深めることがなければ、真の意味での関係性の構築は難しいのではないか」(井上さん)

この点ではまだまだ踏み込みが足りないとも言える。

次ページ仕分け作業など、市内事業者との連携が深まる
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