道長の甥「藤原隆家」天皇に放った"驚愕の一言" いったい何があったのか?道長との逸話も紹介

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『大鏡』にも、隆家は、敦康親王に望みをかけていたと記されています。親王が立太子(皇太子の地位に就くこと)されるのを念願していたのです。

隆家はそのような想いを抱く中で、一条天皇が重態になったときに、御前に参上して一条天皇のご意向を伺います。

しかし、天皇は、敦康親王の立太子を拒みました。結果的に、有力な後見人がいないということで、親王の立太子は実現しなかったのです。

その代わりに皇太子に定まったのは、道長の外孫・敦成親王(のちの後一条天皇。母は道長の娘・彰子)でした。

一条天皇の言葉を聞いた隆家の一言

注目すべきは「敦康親王の立太子はできない」という一条天皇の言葉を聞いた隆家の想いです。

『大鏡』によると、隆家はこのとき「人非人が」と嘆声を発したとされます。隆家の激情が読み取れますが、天皇に対して「人でなし」とは余りにも恐ろしい言葉です。

世間では「敦康親王が即位して、隆家が政治を補佐したなら、天下はよく治まるだろう」(『大鏡』)との声もあったようです。隆家は後に太宰府において善政を施したと言われますが、果たして、天下の政も上手く捌けたのでしょうか。

(主要参考・引用文献一覧)

・朧谷寿『藤原道長』(ミネルヴァ書房、2007)
・繁田信一『殴り合う貴族たち』(KADOKAWA、2008)
・倉本一宏『紫式部と藤原道長』(講談社、2023)

濱田 浩一郎 歴史学者、作家、評論家

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はまだ こういちろう / Koichiro Hamada

1983年大阪生まれ、兵庫県相生市出身。2006年皇學館大学文学部卒業、2011年皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。専門は日本中世史。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『あの名将たちの狂気の謎』(KADOKAWA)、『北条義時』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)など著書多数

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