中国人の"ニセモノ信仰"はいつまで続くか? 実はそろそろ「うんざり」な人も
書籍などもそうだ。最近はだいぶ減ってきたが、以前は地方に行くとよく屋外で本が売られていた。それらは本物を粗雑な紙などに印刷し直し、表紙も異なるニセモノだ。
シャンプーや菓子類、ぬいぐるみなども、有名ブランドに似たパッケージとネーミングに変えたニセモノが売られている。やられているのは外国企業の商品ばかりではなく、国内企業の商品も同様。いかに有名な商品でも、田舎などではニセ物だと気づかずに買っていく人もいる。
「ニセ物市場」はなくならない
かつて上海にあった「㐮陽服飾礼品市場」はニセ物を堂々と販売していることで有名な屋外市場だった。観光名所にもなっており、地方出身者や外国人がやってきて、「冷やかしの言葉を投げかけながら、わざわざニセモノを値切りながら買って楽しむ場所」だった。
当局の取り締まり強化により2007年に閉鎖されたが、今でも小規模なニセモノ市場は別の場所に存在しており、堂々とニセ物が販売されている点は変わらない(ときどき取り締まりが行われ、そのときだけ商品は撤去されるが、またすぐ元に戻るという繰り返し)。
しかし、私が見たところ、中国社会(特に都市部)は以前に比べてずいぶん成熟してきている。交通ルールを守る人も増えてきたし、経済的に豊かになった人も増えており、消費意欲もさかんだ。サービス業の対応もよくなっている。海外に出掛けて目が肥えている人も急増している。それなのに、なぜいまだにニセモノは撲滅できないのか?
理由はさまざまあるが、ひとつは「まだそれしか買えない」(正規品よりも断然値段が安い)あるいは「ニセモノでもいい」と思っている人がかなりいるということだ。
都市の場合、人口は多いが、地方からの出稼ぎ労働者も多く、収入格差だけでなく「意識の差」も相当大きい。前述した台湾人歌手のコンサートチケットはS席で約1000元(約2万円)という高額だったが、それが買えないけれど行きたい人にとって、少しでも安く売られているものがあれば、ついそちらに手を伸ばしたくなるのかもしれない。
そして、手を伸ばせばすぐそこにニセモノがあり “ニセモノが簡単に手に入りやすい環境”が存在する。正規品があれば、まるで対のようにニセモノがあり、値段も安い。
「ちょっと見たところルイ・ヴィトンみたいなんだから、これでいいんじゃない。使えるんだし、安いんだし」と安易に考える消費者もいて、需要と供給がちゃんと成り立っている。成熟しつつある人が増えている反面、そうでない人もまだ数えきれないほど多く、道徳教育の問題や啓蒙が足りないという面も背景にあるだろう。
2つ目はそれ(ニセモノ)で利益を得ている人々がおり、産業の一部となっていて、ある面では経済を支えており、一掃できないという問題だ。かつて模造品の製造が多いとされていたのは浙江省、江西省、広東省、福建省など南方の沿海部だった。現地は「ニセモノの産地」となっており、そこから北京、上海など大都市に運ばれ、露店やスーパー、ニセ物市場などに流通していく。国内だけでなく、中国から世界中に拡散している。
また、アニメやゲームなどの違法サイトも多数存在する。拙著『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』(中公新書ラクレ)でも取り上げたが、ゲーム好きのある中国人の女の子によると「正規版を買った人が無断でネットにアップするんです。彼らはそれをやっておカネを儲けているわけではなく、正規版を買えない人のために、自主的に“善意”でやってあげているだけなんです。正規版を買えない人はそれをダウンロードして無料で見ていますが、どちらにも罪の意識はないし、ごく普通の視聴方法のひとつ、というくらいに思っているんですよ」と、あっけらかんとしている。
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