落合:裏側の数学はけっこうシンプルですよね。ひたすらかけ算をしまくっている。微分にしても、コンピュータの中では差分法※5ばかりですし。
※5 差分法 微分方程式を差分方程式で近似して解く方法。関数f(x)でhを一定の有限値とするとき、Δf(x)=f(x+h)-f(x)を「f(x)の差分」という。差分を限りなくゼロに近づけたとき(h→0)の極限は微分と考えられるので、微分積分と同じ理論を使うことができる。
「何の役に立つの?」といわれがちな数学
暦本:そう。さっきのイプシロン─デルタみたいに無限小まではいかない。極小の値をちょっと変えたら別の極小値がちょっと増えたりするときの勾配を計算している。
落合:それぐらいまではみんな勉強してほしいと思うけど、そうはなっていないですね。
暦本:昔から数学は「何の役に立つの?」といわれがちで、謎の公式を覚えさせられたりする苦行みたいな感じだったけど、いまはコンピュータやAIなどで数学を使う場はたくさんある。「ここで役に立つんですよ」という話はいくらでもできるにもかかわらず、そこにつなげて数学が語られないのはもったいないですよ。
たまに政治家が「三角関数なんか大人になってから使ったことがない」とか「三角関数よりも金融経済を学ぶべき」などと発言するでしょ。だけど、彼らがメディアで発した音声が通信技術によってわれわれのところに届くまでに、三角関数がどれだけ使われているかを想像すると、気絶しそうになるよね(笑)。
たとえばTikTokで動画を送るだけでも、三角関数を1億回ぐらい使うわけだけど。
落合:きっとフーリエ変換のない世界で生きているんでしょう。三角関数なしで通信するなんて、蝸牛管(かぎゅうかん)が入っていない耳で音を聞くみたいな話ですけどね。
暦本:やはり、どんなにコンピュータやAIが発達しても、母語と数学の学校教育は重要であり続けると思いますね。これはIQとはまた別の話なわけで。
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